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甦る古代琉球〈7〉鬼を食うホト(女陰)

ヤマトトトヒモモソヒメが葬られているという箸墓古墳に向かうべく、奈良
のホテルの一室で早起きしたのは3年前の夏。ところが、寝ぼけていたらしく、
ツインベッドの間隙にどすんと尻餅をついた。そして、あることを悟った。
尻餅ついても、モモソヒメのように箸はホト(女陰)には刺さらない。
尾骶骨をしたたか打つだけだ。よって『日本書紀』の記述は何かの隠喩である。

そして、この箸墓に向って考えた。大物主(国津神)の子を孕んでいたかもしれ
ないモモソヒメ(天津神の巫女)に対し、『日本書紀』の筆者は、根絶やしの
意図をもって、箸で子宮を突いて死ぬという猟奇的な描写をしたのかと…。
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沖縄にも、女のホトにまつわる「鬼餅(ムーチー)伝説」がある。
『琉球国由来記』真和志間切(現在の那覇市首里金城)の項。
舞台はもう一ヶ所、あの東大神族(しうから)の里かもしれない大里。
「鬼餅は天孫氏二十三世(※推定10世紀)の時代に始まった」と伝わる。

〜大里の洞穴に住む兄が「人を食う鬼になった」という噂を、首里に住む妹が
耳にした。そこで様子を見に行くと、兄はいなかったが、噂通り釜の中では
人の肉が煮えていた。そこで、妹は米餅と鉄餅を作って兄が来るのを待った。
やって来たが鉄餅を食えなかった兄は、妹の着物の裾が赤いのを見て聞いた。
兄「おまえの下に血を吐く口があるが、それは何か?」
妹「私には口がふたつある。下は鬼を食う口、上は餅を食う口」
兄(鬼)は驚いて後ずさりし、後ろの崖から転げ落ちて死んだ〜

この話が、今にも続く師走の行事「鬼餅」の由来。
家ごとに、月桃(サンニン)の葉で包んで蒸した魔除けの餅を神壇に供える。
写真は、4月の沖縄旅で初めて見た大里のランドマーク(貯水庫らしい)。
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さて、沖縄のホト伝説は、モモソヒメのようにホトを箸でやられたりしない。
妹は、鬼と化した兄を餅とホー(女陰)の霊力・呪力によって撃退するのだ。
以来、妹の住んだ場所は「ホーハイ御嶽」と呼ばれ、子宮を象るようになった。
ホーハイ=ホト=女陰。戦前の沖縄にはまた、火事になると
「ホーハイ、ホーハイ」と、女性がホトを見せるまじないがあったという。

明治に入るまで、沖縄にはこんな諺も残っていた。
「女(いなぐ)は戦(いくさ)の魁け(さちばえ)」
巫女が船団に魁けて呪詛を行う「謡」が『おもろさうし』にも出てくるが、
ことに八重山討伐で陣頭に立った神女として名高いのが、久米島の君南風(ちんべい)。

そこで思い出すのが、斎場御嶽の“奥の宮”であるナーワンダーグスクだ。
尚真王の時代、その八重山討伐に向う王のための戦勝祈願は、斎場御嶽の寄満(ゆいんち)
で執り行われた。寄満とは、ナーワンダーグスクの真下に位置する拝所である。
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↓ 一対の巨岩から成るナーワンダーグスクのイナグ(女)ナーワンダーのほう。
大岩に開いた洞穴(ホト)は、おそらく古来より代々の日巫女の風葬墓だった。
ホト=生命の源=太陽神からの霊力を再生(初期化、更新)するには、寄満は
この上ない礼拝所だったと思う。ホトに勝る霊力・呪力はないのだから。
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こちらナーワンダーグスクのもう一方、イキガ(男)ナーワンダー。
キノコ型に屹立しているらしい。男性器を象る。風葬されたのは代々の首長か。
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(2枚のモノクロ写真は、吉野裕子著『扇』(1970年、学生社刊)から借用)。
by utoutou | 2014-05-21 10:25 | 天孫氏 | Trackback | Comments(0)
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