久高島の夜明け〈4〉ニライカナイの意味

私はたぶん、ナーワンダーグスクの意味をより深く知るために、
久高島のウパーマ浜で日の出を迎えることになったのだろう。

琉球王朝の歌謡集『おもろさうし』が「あけもどろ」と詠んだ東の朝空は、
いつになく美しく、「びんぬすぅい(七色の羽の不死鳥)」の羽根を思わせた。
語り部に「ウパーマ浜へ行け」と言われたが、神と話す方法を知らないので、ただ空を見た。
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久しぶりに「地球を直せ」というメッセージについて振り返る。「直す」とは、
久高島の神事で言う「ノーサ」だと、後で知った。意味は「立て直す」「作り直す」。
島を清め、本来の姿に戻すこと。神女がお祓いで持つススキの束も「ノーサ」と呼ばれた。

『赤椀の世直し』というティルル(神歌)もある。それは男たちが島を清め祓う
8月の「テーラーガーミ(太陽神の祭り)」で、いまに歌い継がれている。
ちなみに赤椀とは「お酌」の歌詞があることから、赤い酒杯のことと思われる。

ヤマトにも「直し」はある。奈良の大神(おおみわ)神社に参ったとき、付近で看板を見た。
ちょっと歩く間に「旅館・万直し」「食堂・万直し」。他に「株・万直し観光」もあるとか。
調べてみたら、万(運)を上げるための三輪明神詣でを「三輪の万直し」と呼ぶそうだ。

神人が「地球を直せ」を「歴史を正せ」と言い換えたのも、古語を知ってのことだったか。
などと考えていたとき、メッセージの続きらしきものが浮かんだ。

この明々たる理(ことわり)のありようを伝えよ。

これはまた、難しいお告げ。ただし、
同時に蒲葵扇(くばおーじ)が思い浮かんだのが幸い。それなら分かりやすい。

愛読書『扇』(吉野裕子氏著)の中のイラストで見た、日扇と月扇。
古来、沖縄の村々の根屋(宗家)の神棚に必ず祀られていたという、一対の神の依り代。
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右の日扇は太陽(男)を、左の月扇は月(女)を表すが、それだけではないと思う。
月(扇)の「欠け」は、太陽と月の位置を決める地球の存在を暗に示している。

太陽と月。陽と陰。その二極関係は常に一定ではなく、逆転もする。
ときに、月の裏に太陽があり、太陽を見ている地球の裏に月がある。たとえば、
この日、夏至のすぐ後の太陽は高い軌道を通り、逆に低い月は大きく見える。
何千年もの間、私たちの祖先は空を見上げ、そうした陰陽のバランスを見てきた。


月の神が棲むという西の御嶽チチンガー(大里)ナーワンダーグスク(斎場御嶽)
そして私がいまいる久高島の東海岸。3点を結ぶ聖なる東西ラインの先、
東方の海上にニライカナイ(理想郷)はあると古代より信じられてきた。
その異界へと繫がる竜宮(海)が、眼の前に広がっている。
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生々流転。物事は常に移り変わる。それならば…と自問する声が湧き上がる。
ニライカナイ(久高島ではニラーハラー)とは東方海上にある他界で、
豊穣も平和も幸福も、そこからもたらされると信じられてきたというが…。

移り変わる…多様な意味のニライカナイという観念も、あったのではないだろうか。
ニライの意味を、外間守善氏は『沖縄の歴史と文化』(1986年、中公新書) でこう記した。

ニ=根(中心)を表わす名詞
ラ=地理的空間を表わす接尾辞
イ=方向を表わす接尾辞

その説を借りれば、「ニライ」にはふた通りの意味が考えられる(※カナイは対語)。
ひとつは、琉球でもっとも古いところ(根)。つまり人祖の里。
もうひとつは、祖神が天下りたところ。つまり天祖の里。

そこで、斎場御嶽の奥宮ナーワンダー(=なでるわ=祖霊の力の意味)に思いを馳せる。
農耕時代以前の古代人が葬られた男女岩。その意味で、ナーワンダーはニライカナイだ。
人骨とともに機織機が発掘されたという御嶽。神降り伝説のナーワンダーもニライカナイと言える。

またイナグ(女)ナーワンダーの拝所には、御神体である「鏡」が祀られているという。
そうだったのか…。聖地ナーワンダーとは、皇祖の里でもあった!?
by utoutou | 2014-07-11 09:27 | 久高島 | Trackback | Comments(0)
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