斎場御嶽のナーワンダーグスクで 祈願していたらしいノロを詠った 「おもろ」(853番)について、語り部と電話で話していた。 風直り 煽(あお)らちへ (ノロは鷲の羽の髪飾りを風に揺らして) 赤の御衣(あかのみそ)煽らちへ (美しい衣を風になびかせて) この「赤の御衣」を『おもろさうし』 の校訂をした外間守善氏は、 「美しい御衣」と現代語に訳しているが、 本当は何色だったのだろう? というのが、私の素朴な疑問だった。 すると語り部は言った。 「赤は女神の色、月神の色ですから、 その霊力をいただく神女は 赤い神衣を着ていたと思います。その名残りから、 沖縄の婚礼衣装は赤を基調にしています 。琉球舞踊のルジン(胴衣)も赤。 久高島の十五夜には、 アカヤミョーブ(赤い天幕)を下げてお祝いします」 そんな折りも折り、 久高島では十五夜(ジューグーヤー)を迎えていた。 9月8日(旧歴の8月15日)。 もう10 日も前のことで、 ややタイミングがズレてしまったが、 島に住む友人や、祭りを見に行った知人から、 続々と写メが送られてきた。 それはそれは美しい赤色。 そして伝統のしつらえ。月の力が注がれる思い。 (こちらには比嘉康雄氏の本から拝借したモノクロ写真) 十五夜の祭場・外間殿の東に立つデイゴの木に掛けた竿に、 月神を象徴する赤い天幕が掛かる。 夜更けには天幕の上に満月が浮く。 月の女神を呼ぶための提灯は、 古くは7個あったそうだが、いまは3個。 月が昇ると、アカヤミョーブの下で神女たち が祈願してお祭りは始まる。 こちらは祭りの後の神女たち。 外間殿の正面にも赤い天幕が下がっている。 来年こそは是非と思う久高島の十五夜。 島ではスーパームーンは話題にならない。 太陽神(テントゥガナシー)と 月神(マチヌシュラウヤサメー)が最高神である。 さて、話は戻って…。 ナーワンダーグスクの祭祀空間には、 3mほどの間隔で3つの香炉が並ぶ。 沖縄中の御嶽のなかでも、 香炉が等間隔で並ぶ御嶽は珍しい。 何しろ、東(久高島)と、 西(大里西原)を結ぶ線上に、香炉が3台。 相当に古代の祭祀を偲ばせるが、 この数字、この配置は何を意味しているのか。 私は勘を頼りに言った。 「向って右(東)の香炉は太陽神ですよね。 すると左(西)は月神」 「考え方は合っています。ただし、太陽は左、月は右です」 「左神(ひじゃいがみ)!? 出雲大社の鳥居の注連縄と同じ、神様目線?」 「そうです。では真ん中は?」 それが、私には分からなかった。 太陽と月という最高神の間にいる神? 「星ですよ、地球。そして…」 語り部は言った。 そして…? 「人です。太陽と月の間にある星(地球) でしか、人は生まれない。 「……」 「火という字を考えてみてください」 「火……」 「左が太陽、右が月とすると、真ん中が、人。 つまり3つの香炉は、 火の神(ヒヌカン)を表しているのです」 ※投稿日が2015年8月になっているのはカテゴリを変更したためで、 ナーワンダーグスクに登頂したのは、'14年8月27日のことでした。
by utoutou
| 2015-08-26 13:35
| ナーワンダーグスク
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