ヤマトタケル ⑨ 火打石と銅剣 〜 稲荷神社

ヤマトタケル東征の旅は、古代産鉄地を巡る旅と
分かって以来、すっかり目から鱗が落ちた。

葦原にスズが生る以上、稲作地と産鉄地は一致する。
稲荷=鋳成(いなり)、稲荷神は産鉄神の使いでもある。
そして、藤がつく名前や地名は、産鉄に関係がある。
(『風と火の古代史』(柴田弘武氏、'92年、渓流社)より)


それは、私が参った稲荷神社にも当てはまる。花見
シーズンに参った椿山荘の白玉稲荷神社(東京文京区)。
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なぜここに稲荷神が? 白玉稲荷とは? と、
あのときは謎だったことが、いまなら分かる。

白玉稲荷は大正13年('24年)、椿山荘創始者の
藤田平太郎氏が、京都の下鴨神社から社殿を移築。
伏見稲荷明神から、白玉稲荷を勧請したものという。

藤田家は長州出身。
平太郎氏の父・伝三郎氏は明治初期、
商社を設立。鉱業を中心に発展、財閥となった。
幕末の長州は武器の補給基地。つまり製鉄地帯。
古代に遡っても、たたら製鉄遺跡が点在する土地柄。
その藤田家が勧請したのが白玉稲荷(製鉄神)だった。



京都伏見稲荷大社に白玉稲荷を訪ね、
見つけたお塚に「金高講」と刻字されていたことも
私の記憶に新しい。それは鍛冶屋の組合なのだろう。
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伏見稲荷でもっとも白玉稲荷が多い御膳谷地区。
祈禱所の横には「眼力社」という神社があったが、
古来、産鉄に携わる人々が目を患うことが
多かったと知れば、当然の神祀りだと思う。

ちなみに、京都の伏見稲荷神社で秋に催行される
火焚祭りは、別名「ふいご(鞴)祭り」という。


また最近参った宝登山神社の宝玉稲荷の神紋は、
今ならどう見ても、燃え盛る溶鉱炉を思わせる。
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全国に3万社あるという稲荷神社。そのわずか
万分の一にすぎないが、稲荷神社の共通点として、
狛犬ならぬ狛狐が、片方の口に玉を、もう片方の口に
巻き物をくわえていることも見逃せない特徴だ。


高尾山薬王院境内の福徳稲荷の眷属は二段構え。
手前に一対の狛犬、奥に、玉と巻き物をくわえている狐。
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狐がくわえる玉と巻き物について、
ブログ「ひもろぎ逍遥」を運営する
lunabulaさんが、鋭い指摘をしている。
玉は隕鉄を、巻き物は暦を意味するというのだ。
つまり製鉄族は、暦法術にも長けていた?
以下引用。

〜眞鍋氏によると、「黒い隕鉄、白い隕石」と書いてあります。
白い隕石から作った鉄が黒色というふうに、シンボル化しているようです。
「2000年前頃 椋の木の黒い果実は隕鉄の象徴とされた。
1500年前頃には真金、すなわち砂土を溶融して得た鉄を指した。
布留の御魂は隕鉄、布津の御魂は砂鉄を精錬した剣。〜

〜製鉄する人たちは、いわゆる「鬼」として、
十把一絡げで言われていますが、いくつかの渡来人のようです。
「里人が来ると、白玉と黒玉を使って、
暦を教えてあげていた」とも書いてあります。〜引用終わり


産鉄民は何度かにわたって渡来した。
金属の精錬技術を持たなかった2千年前、
人々は隕鉄を金属として道具に使ったが、
500年経つと、砂土を溶融する技術が導入された。


さて、伏見稲荷大社は、711年の創建。
秦伊呂具がウカノミタマを祀ったのがはじまり
というが、そのとき既に、日本には
産鉄を溶融する新技術は導入されていた。

その新技術の使い手は、韓鍛冶、
  弥生時代に渡来した旧技術の使い手は、倭鍛冶。
『古代の鉄と神々』(真弓常忠著)を読んだ
私は、そう考えるようになった。

韓鍛冶をもたらした神は、新羅の王子・天日槍。
倭鍛冶をもたらした神は、神話に残る
オオナムチ(=大穴牟遅神、鉄穴神)。


ところで、
「謎の4世紀」「鉄の5世紀」と言われる。
鉄の時代に入るまで、産鉄地で作られたのは、
まさしく葦に生るスズ(褐鉄鉱)を使った
青銅製の銅鐸、銅剣、銅矛であった。

この5月19日、淡路島で確認された銅鐸も、
約30年前、出雲の荒神谷遺跡・加茂磐座遺跡
で発掘されたおびただしい数の銅鐸や銅剣も、
倭鍛冶の人々の手になる銅製の祭具だった。

ヤマトタケルは、各地の旧産鉄(銅)族を、
新しい産鉄民として帰属させるという任務を帯び、
天皇家から送り出された使者ではなかったか。

倭姫がヤマトタケルに与えたという
火打石(袋)と草薙の剣は、旧倭のレガリア(象徴)。
火打石は隕石、そして草薙の剣は青銅製だったと思う。
ヤマトタケルとは、倭鍛冶の血を引きながら、
韓鍛冶の時代に生を受けた、非業の皇子だった。

by utoutou | 2015-05-24 21:42 | ヤマトタケル | Trackback | Comments(2)
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Commented by kusuko at 2015-05-24 23:37 x
はじめまして。
突然失礼しますが、古代史に関心がおありのようなので、一つお知らせさせてください。

兵庫県西宮市の越木岩神社所縁の磐座がマンション建設で破壊の危機に瀕しています

・越木岩神社境内奥に甑岩という磐座があり古代祭祀から続く信仰の場として大切にされてきました
・今破壊の危機にあるのは境内隣接地にある3つの磐座です。
・神社や地元の人たちが守ってきた共有地を戦後の厳しい時代、大学を設置するということであればと譲渡しました。
・大学の経営難によって第三者が購入し現在、3つの磐座以外更地になっています。
・当初の計画では磐座の保存を前提にしたマンション建設だったそうですが業者が約束を破棄し磐座を破壊して建設する計画へと変更してしまったのだそうです

・イワクラ学会で行っている磐座の保存を求める署名活動 最終締切5月31日
・また越木岩神社ブログでは電子署名サイトchange.orgにて署名を開始

「越木岩神社 磐座」でググると嘆願書にサインできるページへ行けます。

よろしかったらご賛同お願い致します。
Commented by utoutou at 2015-05-30 00:08
kusuko さま

コメントをありがとうございます。
越木岩神社のサイトと嘆願書を確認しました。
これからじっくり拝読いたしますね。
御苦労さまです。
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