沖縄の天女伝説 ⑫ 銘苅川沿いの産鉄遺跡

現在は那覇市銘苅2丁目。
銘苅子と天女が出会った川泉・シグルクガーは
   戦前まで、銘苅直禄原(しぐるくばる)にあった。  
直禄原…何やら意味シンな地名だ。 
 
禄(神様の贈り物)がザクザク生る川原?
何が生るかはさておき、直禄原は川沿いの湿地遺跡だ。

写真手前左にシグルクガー拝所があり、写真正面方向に、
「ふいごの羽口」が出土した銘苅原南遺跡がある。
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※ふいごの羽口についてはこちら
衣川製鎖工業(株)様のサイトがたいへん参考になる。



『銘苅原南遺跡発掘調査報告書』
('02年、那覇市教育委員会)によれば、この地の
地層は1〜12に分類され、もっとも多く出た土器は、
近世(地層の上から1〜3)のものと、
グスク時代(地層4〜6)のものだという。
※グスク時代とは、11世紀〜15世紀前半のこと。


グスク時代中期にあたる地層(5)から、土製の
ふいごの羽口(形状と色が様々な破片)が16個出土。
また、鉄鏃、鉄釘、刀子などの鉄製品も出土したという。

焼土を多く含む地層ということで、製鉄炉跡も出たのか
と思いきや、残念ながらそれはなかったそうで、
報告書からも同様の無念の思いが感じられる。以下引用…
〜焼土層の広がりや羽口、鉄滓などの遺物が得られたことから、
鍛冶遺構の存在も考えられたが確認されなかった。〜  

ただし、この地にはさらに古い地層(地層7〜9)
があり、本土で言えば、縄文時代晩期に相当。
土器と脊椎動物の遺骸が目立ったという。



↓報告書から拝借した図版。写真左上は、現在は、
新都心公園となった銘苅原南遺跡遠景(東南から)。
右上は、北から撮った地層検出の模様。
下段の左は、縄文時代晩期の土器。
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さて、標高12.8mを頂点とした谷地状地形という
安謝東原南遺跡からは、2基の炉跡が出土。
そこには33個の小穴と、炭化物の堆積があり、
また床面の一部には焼土が広い範囲で認められる
ことから、報告書は「鍛冶関連遺構」だと記している。

遺物も、ふいごの羽口10点、鉄釘1点、鉄片3点が出土。
炉床から採取した炭化物は、放射性炭素年代測定により、
13世紀前半〜14世紀中頃という結果が出たという。

他に貝殻、土器、石器、徳之島カムイ焼きなどが
出ており、全体としては、縄文時代後期・弥生時代
から以降の重層的な遺跡と考えられるという。

近くの安謝東原遺跡とは同遺跡の可能性があるそう
だが、そこは銘苅川下流にあたる多和田川の湿地帯。
ここからも炉跡と、羽口38個が出土しているといい、
地形から見ても、まさに産鉄地の条件に当てはまる。

興味が引かれるのは、炉跡の下層から、
縄文後期、弥生〜平安時代の土器が出土したことだ。
銘柄川はやがて安謝川に合流して東シナ海に注ぐ。
人々はその川辺の立地を活かして暮らしていた。
報告書では言及していないが、縄文後期から代々、
産鉄民がこの地に住み着いていた可能性も
あるのではないだろうか?



↓写真は『安謝東原南遺跡・旧天久原古井戸遺跡』
('02年、那覇市市教委刊)から拝借。
下から2段目右が、鍛冶遺構の炉跡(横辺70cm)
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もう1ヶ所、やはり谷地である銘苅港川遺跡
からも、ふいごの羽口が出土した。
他に出た土器などの遺物の年代も含めると、
貝塚時代後期(弥生〜平安時代)からグスク時代
にかけての遺跡だという。

また焼土層の広がりや、黒色土層が確認された
ものの、具体的な鍛冶関連遺構は検出されなかった。



↓1947年ころの地形と遺跡分布図。
赤い矢印は私が加工したものだが、
南北に流れる銘苅川(青線)に沿って遺跡が密集。
地図上に流れる安謝川(青線)沿いに遺跡はない。
地図のなかで、
上の矢印は、銘苅港川遺跡
真ん中の矢印は、安謝東原南遺跡
下の矢印は、銘苅原南遺跡
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ところで、
米軍から土地返還後は、公団による土地区画整理が
行われ、現在は住宅街に変貌しているが、港川の地名が
示す通り、15世紀の初頭までこの地は入り江だった。

この一帯には「浜下り」という、
いまは途絶えた古来の風習があった。
旧暦3月3日に、女性たちが揃って天久浜に出て、
干潮の海で禊ぎをしてから、海藻を苅る。
銘苅(めかる)の意味は、そこから来ていると思う。

語り部に言うと、やはり同じ意見だった。
「北九州の門司港に、和布刈(めかり)神社
がありますね。銘苅も同じ意味でしょうね。
海の若布(芽)を苅り、スズを苅り、稲を苅る。
銘苅には古代からそんな海人族が住んだと思います」

銘苅家とは、海人族の技術集団だったのか…。



by utoutou | 2015-09-19 18:30 | Trackback | Comments(0)
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