沖縄の天女伝説 ㉑ 天御中主神と七人の日巫女

首里末吉のノロ殿内御神屋に参った。
天女伝説の地・南風原宮城を訪れた日のこと
だったので、もう2週間近く前のことになる。
ノロ殿内(どぅんち)とは、ノロの
火の神(ひぬかん)のある家の敬称である。

その日、会うなり語り部が言った。
「聞得大君殿内にあったという掛軸について、
思い出しましたよ。同じ弁財天の掛軸が拝める
場所が、いまでもあるんです。首里の末吉町に」

昭和2年、聞得大君殿内を訪れた鎌倉芳太郎氏が、
掛軸に関するメモとスケッチを残していたことは
書いたが、(「鎌倉ノート」はこちらの過去ログに)
当主である男爵の話を図示しただけのものらしく、
琉球王朝最後の聞得大君が崇めていた神の絵図は、
結局、はっきりとは分からなかった…。



幸運にも拝観できたのが、↓こちらの掛軸。
建て替えて間もない神屋の神壇に掛かっていた。
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御挨拶し見上げていると、後ろで語り部が言う。
「弁財天…ですが、蛇になり龍になって見えます。
妙見菩薩にも感じられますね…そして…」
「そして?」
「その奥に、天御中主神の姿が控えています」
「アメノミナカヌシノカミ…ですか…」
「日月北辰信仰では、北極星、天帝、太一。   
ここ末吉は首里城の北に位置するので、
守護神として特にお祀りしていたのでしょうね」
「はあ、なるほど…」


なぜ天御中主神に見えるのか。
「見えない」私にはすぐには理解できなかったが、
何日かして、そうかもしれないと気がついた。
絵の最上に描かれているのは、太陽と月。
太陽と月は、神の島・久高島でも最高神として
祀られ、崇められてきたのだった。
その自然最高神のもと、神格化され描かれている
のが、天の真ん中に在って動かぬ北極星こと
天御中主神だろうことは、疑いようがない。

弁財天に見える中央の美しい神女こそ、
古代琉球より代々神に仕えてきた日巫女。
その名は…「玉依姫」と語り部。

魂が依り憑く姫、あるいは神の子を宿す姫、
そして、男兄弟を守護する妹である「オナリ神」。
国王と祭政一致を司る、聞得大君の元型である。



↓ 掛軸の上部分をズーム。
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掛軸の下部分には「七ぬウミナイ」が描かれている。
北斗七星に例えられる日巫女、玉(魂)依姫たち。
久高島の秘祀イザイホーで神女になる女性たちが
七つ橋を渡って七つ屋に籠るのも「七ぬウミナイ」
になるための儀式だったのだろう。
神女たちに神酒を注ぐ神職は「にぶとぅい」。
北斗七星のかたちをしたクバ柄杓のことである。
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右の位牌(とーとーめ)には、三神が祀られる。
右から天帝子、奴留(ヌル)大神、辺土野主。
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玉依姫と言えば…、
天久のある古老が語っていたという伝承がある。
〜天久には、中世玉依姫(なかゆたまよりひめ)
という神女がいて、機織りをしていたそうだよ。〜

神女は神名を一生涯隠さなければいけないのに、
なぜそれが伝わっているのだろうか?

語り部の意見はこうだ。
「それが、天女と言われた娘の後世の姿なのでは。
婚家と別れる理由として、名乗る必要があった?
“神の子”を生み継ぐために娶られた旧家の娘と
いうのが、伝説にいう天女の現実かもしれません」

元伊勢・籠神社の先代宮司は、天御中主神は
豊受大神のことであり倉稲魂(ウカノミタマ)
のことであると記した。琉球の神女たちは、
ウカノミタマのことを「七つの首の蛇」と呼ぶ。
古代琉球に渡来した天孫氏の異称である。



琉球八社のひとつ、末吉宮を末吉公園側から。
そう言えば、末吉町に屋号・大東(うふあがり)
という旧家があったという。『琉球祖先宝鑑』には、
「アマミキヨは(大陸の)大東から来た」とある。
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by utoutou | 2015-10-28 18:29 | 天女伝説 | Trackback | Comments(2)
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Commented at 2015-12-18 18:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by utoutou at 2015-12-21 14:10
> 君さん
こんにちは。場所は末吉町にありますので、末吉公民館で聞いてみてください。
県外者の私が言うのもヘンですが、
基本的に自由に入れる神屋はないと思っています。
けれども、だいたいが個人所有ですので、隣接する母屋をお訪ねして、参拝させていただきたいのですが…と、お話ししてみてはいかがでしょうか?
うまく気持ちが伝わりますように。
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