九頭龍大神 ③ 岩戸に隠れた女神

明治の神仏分離で戸隠神社となるまで、
霊地・戸隠山は戸隠山顕光寺と称していた。
それは849年、学門行者という僧が開いたと
と言われるが、さらに古い歴史があり、
平安後期には戸隠寺と称していたという。

13世紀に比叡山の僧侶が記した
『阿娑縛抄(あさばしょう)』という、天台宗の
僧侶が記した書が、当時の九頭龍を伝えている。

以下に、『阿娑縛抄』の戸隠山の部分を要約。

〜大きな岩窟があった。そこで、
(学門行者が)法華経を唱えていると、南方から
臭い風が吹き、九頭一尾の鬼が現れて言った。
「以前祈った者は、こちらには害心がないのに
自らの毒気にあたって皆死んでしまった。
前の別当が貪欲ままに施物を用いて修行を
怠ったので、自分はこんな身になってしまった
学門行者が、「鬼は形を隠すものだ」と言うと、
鬼は石屋内に入って籠り、真言を唱えた。
学問行者がその龍尾鬼を、
石室の戸で封じたので、戸隠寺となった。〜



戸隠神社・九頭龍社から奥社方向を見る。
左が古代の御嶽らしき断崖絶壁の磐座。
学門行者はこの南(手前)に九頭龍を封じた。
a0300530_17322693.jpg



ただし、鬼は、最初からその姿ではなかった。
九頭一尾という身に「変わってしまった」のだ。
逆にいえば、もともとは、国主(くず)の神
として、人々が崇める龍神・大蛇だったのだろう。

さて、戸隠神社の由緒では、
天照御大神の「天の岩戸」神話を起源とする。

戸隠社・奥社の祭神は、
天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)。
栞には、次のように解説されている。

〜戸隠神社は神代の昔、天照大神が
天の岩屋にお隠れになった時、無双の神力を
もっても岩戸を開いた天手力雄命を戸隠山の
麓に奉斎したことに始まります。〜

同じ岩戸でも開くと閉じる…大きな違いである。


↓戸隠神社・中社にも「天の岩戸」にちなむ
祭神・天八意思兼命が祀られている。
隠れた天照大神に出てきてもらうべく、
神楽を考案した、ご存じ「知恵の神様」。
a0300530_06205382.jpg


戸隠五社のうち、
宝光社には思兼神の子神である天表春命が、
また火之御子社には、天鈿女命が祀られている。
いわば「天の岩戸」神話グループに縁の神々。
けれども、神話の主役・天照大神は祀られていない。
そこに、戸隠の人々の意地を見る思いがする。


岩戸に閉じ込められた地主神。
岩戸が開いて誕生した天照大神。
この対比で、九頭龍大神の本質がより鮮明になる。

九頭龍大神とは後の九頭龍弁財天。つまりは、
天照大神によって存在を消された縄文の女神だ。


中社の右奥に流れていた小さな滝。
「昔はなかったよ」と、参拝客が教えてくれた。
滝神の復権? 戸隠山の姿も変化している。
a0300530_08055192.jpg


滝の横の九頭龍碑には、お賽銭がこのように。
九頭一尾の鬼は、福徳の龍神として復活した?
a0300530_06210942.jpg




by utoutou | 2016-03-23 13:14 | 九頭龍 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://mintun.exblog.jp/tb/22626734
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 九頭龍大神 ④ 鎌卍の社紋は語る 九頭龍大神 ② 弁財天は復活した >>