六甲山と瀬織津姫 ⑦ 真名井御前は日下部氏の姫

空海に浦島太郎の珠を渡したと言われる
真名井御前は、日下部氏の姫だったのか?
つまり、籠神社の海部氏の養女だったのか
について、あれこれ考えてみたい。

空海とともに神呪寺(かんのうじ)を創建して、
瀬織津姫を弁財天として祀った真名井御前。
その名前から、丹波の比治(ひじ)の真名井を
舞台にした「天女伝説」が、つい思い浮かぶが、
そのあたりに何か、真名井御前の出自に関する
ヒントが隠されているかもしれない。


籠神社の奥宮・真名井神社の鳥居。
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『丹後国風土記』(8世紀)に載るその
天女伝説が、沖縄のそれと決定的に違うのは、
羽衣を隠したのが男でなく、
和奈佐という老夫婦だった点だ。
二人に助けられた後、豊宇賀能売命という天女は、
お酒を造って老夫婦に大きな富をもたらした。

比治の里という伝説の舞台の地名、
酒を造るという特技(噛み酒)、
そして、老夫婦の名乗っていた「和奈佐」…。
このキーワードを並べてみると、この天女、
やはり琉球や奄美の島々に関係がありそうだ
と、思わずにはいられなかった。

地名のヒジに似たヒシとは、琉球から
南九州にかけて連なる島々を取り巻く干瀬のこと。
また、女が噛み酒を造るのは隼人族の風習。
隼人とは、薩摩の大隅半島にいた人々の呼称だ。

古来、噛み酒の風習は琉球にもあり、
久高島の古祭イザイホーでは、神女(かみんちゅ)
の就任儀礼を終えた女たちのする初仕事は、
嚙み酒を神人や島人に振る舞うことだった。
歯の綺麗な女ほど、よい酒が醸せると言われた。



久高島イザイホー(4日目)の演目、
グゥキマーイ(樽回り)と名のついた円舞。
中心に、タルマーミキ(樽の神酒)が置かれる。
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以前イザイホーの記事にも書いたが、
噛んだ酒を発酵するのには月の力を借りたという。
久高島では月の女神の名は、マチヌシュラウヤサメー。

ヤマトでは、発酵の神、月の神、草の神。
『古事記』によれば、鹿屋野比売神(かやのひめかみ)。
亦の名は野椎神(のづちのかみ)だと記されている。
    鹿屋野比売神は、イザナギ・イザナミの間に生まれた。 
そして、木花咲耶姫命の母神となった。
  
鹿屋野比売神は、なかなか歴史の表舞台に
登場しないが、その娘・木花咲耶姫命を祭神
とする都萬(つま)神社が、宮崎県西都市にある。
古来、司祭しているのが日下部氏である。

酒造りをする天女・豊宇賀能売命、
真名井神社の祭神である豊受大神
そして、真名井の霊水で育った真名井御前。
三重に重なるその女神像は、真名井御前が、浦島子
と同族の日下部氏の姫だと暗示しているように思える。

そう言えば、
浦島神社の相殿に祀られた祭神は、月讀命だった。



真名井神社への道。里と呼ぶのにふさわしい空気感。
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by utoutou | 2016-04-22 18:17 | 瀬織津姫 | Trackback | Comments(0)
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