六甲山と瀬織津姫 78 稚日女命の謎

朝鮮半島にあった加耶諸国からの渡来人は、
おびただしい数だったと言われる。

文化人類学者の小山修三氏の研究によれば、
日本全土における縄文晩期の人口は75,800だった
のが、弥生時代になると594,900に、さらに
奈良時代になると5,399,800に増加している。

地方ごとで言えば、九州地方の縄文人は6300で、
弥生時代になると、1,05,100増加している。
10万近くが一気に増えたのは、渡来人の
 移住によるもので、各地に故地の名がつけられた。

例えば、琵琶湖東岸の安羅神社が鎮座する草津市
穴村は、加耶諸国にあった安羅(あら)国からの
渡来人が住んだ土地で、地名は安羅が穴に転訛した。
神社には新羅の王子だったという天日槍が祀られる。

加耶・伽耶・萱・蚊帳などと同じように、
安羅・阿耶・阿良も伽耶諸国に由来するわけだが、
安羅を思わせる地名ならば、沖縄にも何ヶ所かある。

石垣島には安良(やすら)という集落があった。
(明和の大津波で被害に遭い、やがて廃村になった)
本島北部の離島・伊江島に阿良(あら)御嶽があるし、
本島中部北谷のアラハビーチは、安良波と表記する。

加耶・加羅・安羅・新羅だけでなく、
百済を表す「大加羅」も、日本各地の地名になった
という説を、石渡信一郎・著『日本地名の語源』で
一読したときは、かなり驚いたものだ(以下要約)。

☆701年頃、倭国は国名を日本に改めた。
☆4世紀に成立した倭国は、南朝鮮からの渡来人
が(日本列島に)建設した国家のことである。
☆加羅系倭国の後、5世紀に百済系倭国が成立した。
日本語の地名には、二つの倭国が関わっている。



この百済系倭国「大加羅」が転訛して「アカラ」に
 なったとするが、沖縄の聖地に見る名もその名残りか。
伊是名島に神降臨伝説のアカラの御嶽があり、久高島の
アカララキ(※ラキ=御嶽)も由来は不明とされるが…。
(※写真は'14年の旧正月に撮影)
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久高島の年中行事のひとつ「太陽の祭り」である
テーラーガーミでは、アカララキを出発した男たちが
茅(かや、方言で「すぅば」)を手に島祓いの行進
をするのだが、そのときの神歌「赤椀の世直し」に、
〜ソウルから下たる赤椀の世直し、
ヤマトから下たる黒椀の世直し〜のフレーズがある。
(※世直し(ゆのーし)とは祭具の盃のこと)

ソウル(朝鮮語で都)とは朝鮮半島のどこかを指す
のだろうと思っていたが、最近は半ば確信している。

スサノオを「天地の大神様」「天王ガナシー」
として崇める沖縄では、祭祀や風習のなかに、古代
朝鮮半島を思わせる様式を見ることは少なくないが。

 アカララキについては、魂の再生を司る女神として、
瀬織津姫やアラハバキをダブらせて書いてきたが、
渡来の女神かと推理してからは、同じ出自かも
知れない稚日女命が気になって仕方なくなった。

記紀神話では、スサノオから受けた狼藉や無残な
死に方が描かれているが、何しろ天照大御神の
岩戸隠れの動機となったのだから、神格は高い。
とはいえ神像は謎が深い気がして、語り部に聞いた。

「稚日女命は、どういう女神さまですか?
  祀る生田神社では、天照大御神の妹だとしてますね」
言うと、語り部は、すぐさまこんな答えを…。

「私にはそうは思えないですね。かと言って、
よく同神と言われる丹生都姫とも思えない。
稚日女命は稚児のような日巫女に見えます、そして」
「……?」
「どこか海辺に鳥居のある神社に祀られていますね」
「それなら、鳥羽の伊射波(いざわ)神社では…?」

稚日女命が祀られる神社は、全国にそう多くなく、
そのうちの伊射波神社については書いたことがある。

志摩国一宮。伊雑宮の元宮と言われ、
加布良古崎(かぶらこざき)の海岸に一の鳥居が立つ。
縄文から平安時代の複合遺跡である贄遺跡から近く、
「聖徳太子がしていたような金のバックルが出た」と、
 伊雑宮のある磯部で古老から教えられたものだった。 

ブログには「祭神は伊左波登美命」とだけ書いたが、
主祭神が稚日女命という由緒は記憶に新しい。

「この神社、浦島太郎や倭姫にも関係があります?」
聞くと、語り部は言った。
「龍宮の蚊帳が収められてたのは、ここかも知れません」

稚日女命、アカララキ、浦島太郎、そして「蚊帳」。
何か、海底宮殿を探り当てたような予感が高まる…。
伊射波神社の所在地は、安楽(あら)島である。



旧年中のことになるが、丹後の久美浜へ行く朝、
稚日女命を祀る生田神社(神戸市中央区)に参拝した。
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六甲の越木岩神社(西宮市)にも、その磐座がある。
六甲と伊勢と沖縄。稚日女命が繋ぐそのラインとは?
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by utoutou | 2017-01-12 06:33 | 瀬織津姫 | Trackback | Comments(0)
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