六甲山と瀬織津姫 81 玉柱屋姫命

大嘗祭の神御衣を織るための「赤引きの糸」を
産するのは、三河国宝飯郡の赤日子神社
(現在の愛知県蒲郡市)だと『延喜式 巻九』にある。
とはいえ、三河地方には古来「赤引きの糸」の産地
は他にもあり、それを伊勢神宮まで運搬する
「お糸船」という神事も、現代にまで続いている。

つまり、「赤引きの糸」とは「明らひく糸」。
神へ供進するための「清白な糸」という意味で、
赤日子神社で独占生産されたものではなかったようだ。

「赤引きの糸」は、『日本書紀』にも登場する。
持統6(692)年5月の13日のくだり。
※『日本書紀』講談社学術文庫版より引用

〜伊勢神宮の神官が天皇に奏上し、
「伊勢国の今年の調役を免じられましたが、二つの
神郡(渡会郡と多気郡)から納めるべき、赤引き糸
三十五斤は、来年に減らすことにしたいと思います」
と言った(今年は入用の免じ難いとの意か)〜

原書では「伊勢大神が言った」とあり、神託を
神官が奏上したということらしいが、どうもこの
 現代語訳が腑に落ちない感じがしてならない。
私なら、こう意訳したいところ。「神官が言った。
赤引きの糸を急に奉納中止にされては困ります…」

しかし、これは、はたして天皇に奏上する物言いか?
まるで、命を賭けた神官一世一代の直訴ではないか。

実はこの「事件」には伏線があった。その2ヶ月前、
持統天皇が強行したらしい伊勢行幸だ(以下引用)。
〜(天皇は)お通りになる神郡(度会、多気の両郡)
と伊賀・伊勢・志摩の国造に冠位を賜わり、当年の
調役を免じ、また供奉の荷丁・行宮造営のための
役夫のその年の調役を免じ、〜

ここを改めて読んで、私は思った。持統がした
「神郡への調役免除」とは、伊勢神宮への嫌がらせか。
だとしても、妙な気はする。持統が伊勢神宮の祭祀
(その当時に確立していたかは謎だが…)を妨害した
  のなら、そこにはいったいどのような理由があるのか。

まるで出口の見えない迷路をさまよう感じで数日間
を過ごした挙句、ひとりの姫に辿り着いた。


玉柱屋姫(たまはしらやひめ)命。


↓伊雑宮、そして伊射波神社の祭神の一柱であり、
やはり祭神の伊佐波登美命の妃でもあったといい、
天日分神(あめのひわけのかみ)の子だという。
そして天日分神とは、当時の伊勢神宮の神官であり、
度会・多気という神郡の郡領だった度会氏の祖。
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そして、『伊勢風土記』には、こう記されている。
〜天日分神は、天御中主神命の12世の末裔〜

そこに、持統が度会氏を忌み嫌った理由があったか。
やがて、その神官の座は荒木田氏へと交代する。
荒木田氏は中臣氏同族であり、中臣鎌足は大化の改新
で活躍した後、没した669年に藤原姓を賜った。

 その藤原鎌足の子が、持統から絶対の信頼を得た
 藤原不比等部あり、その名が歴史に初登場するのは、
あの、神官が「赤引きの糸・舌下事件」を起こした
と、私が推理する年の3前前…689年のことだった。

「赤引きの糸」こそは、度会氏や安曇氏、さらには
 琉球の始祖とされるアマミキヨ族など、古代海人族に
 とっての天祖・天御中主命に供える幣帛だったと思う。




伊雑宮の樹々が繁る神域。
玉柱屋姫は伊勢を紐解くのに重要だと、語り部は
 言っていたが、思えばこの女神も瀬織津姫である。
詳しくは、次回に…。
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那覇市首里にある ↓「子ぬ方(にぬふぁ)の御嶽」
へは、昨年11月に初めて行った。祀られるのは、
ニヌファ星=北極星=北辰=天御中主神命。
伊勢一帯で崇められる「太一」と同神である。
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by utoutou | 2017-01-24 22:45 | 瀬織津姫 | Trackback | Comments(3)
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Commented at 2017-01-26 12:16 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2017-01-26 12:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by utoutou at 2017-01-28 04:37
> tomishimaさん
ご訪問ありがとうございます。瀬織津姫、弁財天、市杵島姫、そして久高島のアカララキ。その女神たちは、沖縄でいう宇天母親加那志のことだと思っています。
お話し会は、昨年からお休みしているのですが、今年は計画するかもしれません。その際はよろしくお願いします。
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