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六甲山と瀬織津姫 117 アカル姫のレイライン

久高島八月祭り(テーラーガーミ)で男たちが集落をお祓い
しつつ歌う神歌『赤椀の世直し(ゆのーし)』。世直しとは
神に神酒(ウンサク)を供えるための木のお椀を指すというが、
歌詞にあるその世直しの出所が、私には長年の謎だった。
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〜サウルカラクダユル ヘイ(サウルから下った)
アカワンヌユナワシ ヘイ(赤碗の世直し)
ヤマトカラクダユル ヘイ(ヤマトから下った)
クルワンヌユナワシ ヘイ(黒碗の世直し)〜
(※全歌詞と祭りのレポートは こちら に)

さあ、世直し(酒椀)に神酒を注いでお供えしよう…と。
その世直しが下された元とは、久高島に渡来した先祖の故郷
らしいが、「サウル」と「大和」とは一体どこのことか?

祭りで歌った経験のあるオジイは言った。
「ソウルは中国、ヤマトは大和(本土)のことだよ」と。

ところが、この度、語り部が視た世直しは違った。
「いま初めて視ました。赤椀は赤い琥珀でできている。
琥珀だから、光線によって黒椀にも見えたわけですよ」

一瞬、息を飲んだほど、意外な話だ。
「赤椀と黒椀の2種類があるわけじゃなかったのか…」
語り部も、自ら霊視したものに少し興奮しているようだ。
「渡来の歴史を隠して神を祀っていたのでしょうね…」


赤い琥珀で作られた、世直し。
そう聞いて思い出すのは、何年か前に観た
『草原の王朝〜契丹〜美しき3人のブリンセス』展である。
印象に残った遺物に、複数の赤い琥珀の装身具があった。


↓ 図録から11世紀前半の王の首飾り写真を拝借。
解説文によれば、龍や魚や蓮華を浮った珠を繋いだもの。
赤琥珀を好む傾向は「中原」の民、つまり漢民族にはなく、
それを珍重するのは契丹の王族の特徴ということだ。  
また、赤琥珀は契丹領内の産物とも考えられるらしい。
この材質で作られたのが、赤椀の世直しか…。

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世直しがいつ琉球にもたらさせたものかは分からないが、
赤や朱は古代人にとって神聖な色だったという。特に
中原の周縁に住む倭人にとっては。漢民族から東夷など
と呼ばれた、ユーラシア大陸の先住民たちの立てた国は、
契丹古伝によれば東大神族(しうから)。その民は赤を珍重した。

いっぽう、アカル姫は太陽を思わせる赤い瑪瑙玉の化身。
その母は昼寝して陽光にホトを射されて妊み、赤玉を生んだ。

それを思えば、赤椀はアカル姫の象徴として相応しい。
アカル姫が東大神族の流れにいるならば、あの神歌の
「ヤマト」とは、東大神族=倭(やまと)とも受け取れる。

「ところで…」と、語り部は言った。
「アカル姫の霊は東方(あがるい)の御嶽にいるようです。
久高島のアカララキ以外にも、同じ名の御嶽はありますか?」

しばらく考えて、「あーっ」と思いついたのが玉城城である。
玉城城の城内にある「天つぎ雨つぎ」(※由来記では雨粒天次)。
「その神名は、アガル御イベ・ツレル御イベといいます。
地元では、アガルイの御嶽と呼ばれることもある」



という訳で、翌日さっそく玉城城(南城市玉城)に登った。
この日は珍しく一の郭までに2組の見学客とすれ違った。
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一の郭の丸い穴から城跡に入ると火の神(写真右)がある。
夏至の朝日は一の郭を通り、この香炉を射すと伝わる。
石積みの中が「天つぎ雨つぎ」こと「アガルイの御嶽」だ。
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いつものように一の郭から琉球ゴルフ倶楽部を見通す。
夏至の朝日を見ようと登ったときは、あいにくの雨だった
…などと思い出していると、ふと、あることに気がついた。
あの山の先に、垣花城(かきのはなぐすく)の城跡がある。
城内の御嶽も、やはり「アガルイの御嶽」という。
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垣花は、古くは和名垣花と呼ばれたという。
和名とは、大陸から渡来して大和古代豪族となる和邇氏の
根拠地だったろうと、語り部がかねてから言う集落である。

玉城城と垣花城にある同じ神名の「アガルイの御嶽」。
2ヶ所は、まさしく夏至の朝日のレイライン上にある。
つまり「アカル姫のレイライン」なのか…?













by utoutou | 2017-07-09 12:57 | 瀬織津姫 | Trackback | Comments(0)
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