六甲山と瀬織津姫 100 宝珠は龍より出る

六甲山と瀬織津姫シリーズも、とうとう100回目。
当初2、3回で終わるはずが、なぜこんなに長く続く…。

語り部が「宝珠は(六甲山に)隠された」と言うので、
それは「空海の隠した珠」だろうと推理してから、早1年。
歴史時間を遡ったり下ったり、東奔西走したりもしたが、
それがはたして本当に「琉球の珠」なのか、そしてまた
六甲山のどこに隠されたのかは、未だに分からない。


空海が神呪寺の如意輪観音像に隠したという如意宝珠は、
浦島太郎が龍宮から持ち帰った箱に入っていたものという。
その伝説には、どんな意図が込められているのか。
そして「琉球の珠」なら、なぜ隠す必要があったのか。

その答えは、琉球から六甲山へと海人族が北上した
   であろう足跡を甦らせるヒントになるはずだったが…。  



昨年5月18日、如意輪観音像(融通観音)ご開帳の日
の甲山・神呪寺。横断幕の上に金の宝珠があしらわれていた。
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この一件は迷宮入りかと思った矢先、如意宝珠にまつわる
ある言葉を、ひょっこり思い出した。龍樹の著による
大乗仏教の論書「大智度論」に、それはあった。

〜宝珠は龍の脳より出る〜

宝珠は龍の頭に乗っているという説である。その龍とは、
沖縄や南方の海域に棲むイラブー海蛇を指している可能性
もあるかと、語り部の意見を聞いてみると…。

「はい、可能性はあると思います。
イラブーは、龍宮の宝を刈る生物と言われますからね」
と、即答が返ってきた。
「宝を刈る…とは、和布刈神事を思い出す表現ですけど、
 まさか若布(わかめ)では、宝珠になりはしないですよね?」
「……」
語り部は電話の向こうで沈黙していたが、
それも束の間だった。すぐに反対に質問が飛んできた。

「若布の根っこには、何が付いてますか?」
 若布の茎に付いているのは若布と、言いそうになったが、
何か閃くようなものを感じて、すぐに言い換えた。

「スズが付いていたのかもしれませんね。 製鉄材料の褐鉄鉱」
「はい、そうだと思います。筒が3つ、縦に並んでいます」
「筒が3つとは、住吉三神のことなんじゃないですか!?」

底筒男命(そこつつのお)、中筒男命(なかつつのお)、
表筒男命(うわつつのお)の三神は、住吉大神ともいう。
住吉三神は海人にとっての航海神で、オリオン三星を神格化
したものだと考えているが、そこに、若布と、褐鉄鉱…。
解きほぐすのが相当に難しそうな組み合わせである。



旧正月元旦の朝3時、和布刈神社で和布刈神事を見た。
対岸の住吉神社でも同時に行われるというが、未だに秘祭。
ともあれ、ふたつの和布刈神事と琉球には強い因縁がありそうだ。
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住吉大神と若布と褐鉄鉱を解く鍵は、『日本書紀』にあった。
三韓遠征のくだり、仲哀天皇に祟った神々の名を、神功皇后
に問われて、神は撞賢木厳御魂天疎向津媛などを告げたが、
その最後に、住吉三神の名を次のように挙げていた。

〜 日向国の橘小門の水底にいて、水葉も稚(わかやか)
に出で居る神、名は表筒男、中筒男、底筒男の神 〜

水底の水葉に憑依する神を住吉三神という、と。
それは「筒」と呼ばれたスズ(褐鉄鉱)のことと考えられる。

語り部が言った。
「若布の根っこを取り巻いたスズは、筒の形をしている。
 それを食べるから、イラブーの体内で珠が作られ、
珠は龍から出ると言われることになったのだと思います。
和布刈神事は、海人族が龍宮(琉球)から来た証でしょう」

では、住吉三神こと「筒の三神」とは、何を指すのか?
「造化三神のことだと思います」
「天御中主神、高御産巣日神、神産巣日神ですか。
天地開闢の神が若布に憑依すると考えられていたとは…」


筒の形はどんなだろうと探すと、視力検査表に行き当たった。
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↑この筒が、若布の茎を取り巻いていた「神」の形と考えると、
ひょっとして、勾玉の原形は「筒」なのではないか…。



旧正月の元旦、初若布の奉納神事を待つ和布刈神社拝殿。
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by utoutou | 2017-04-09 16:19 | 瀬織津姫 | Trackback | Comments(0)
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