美作加茂へは、前日、空路東京からまず鳥取市へ入り、 1泊してJR因美線で南下したのだったが、その経路を 辿っていなければ、全国出土の7割は美作からという 土師質陶棺に、あれほど強く思いを巡らせなかったと思う。 因幡から美作へと、また逆に美作から北上して因幡へと、 いずれのルートだったとしても、土師氏族の広がりを 思わせる痕跡の極致に、美作加茂で見た土師質陶棺はあった。 鳥取では↓お約束の砂丘を観光。さらに西へ30㎞離れた岬 ・長尾鼻の南にある弥生遺跡・青谷上寺地(あおやかみじち) 遺跡展示館を見学。そして、市内に点在する神社巡りをした。 鳥取市で参ったのは、売沼神社、白兎神社、土師百井神社、 因幡国一宮・宇倍神社などだったが、もっとも印象深かった のが、天穂日命神社(鳥取市福井)。地図はこちら↓ 日本一大きい淡水池という湖山池の西に位置する。周辺 には、その御子神を祀る天日名鳥神社があり一族所縁の地? 天穂日命は、出雲臣と土師氏の祖と伝わる神である。 天穂日命は、神話では天照御大神の次男とされ、出雲国造家 、出雲大社宮司家である千家氏の祖とされるいっぽう、その 国造交代の際の神火相続式をする神魂神社(島根県松江市) を創建した神とも伝わる。つまり、天穂日命は「火」の神。 そして、先日参った鳥取 の天穂日命神社には、由緒がこのように記されていた。 (以下要約) ☆古代高草郡の豪族因幡国造氏の氏神を祀る。 ☆9世紀頃までの因幡では、最上位の格式にあった。 ☆因幡の中心的勢力は、因幡国造氏だった。 因幡国造家の祖でもあったのか、天穂日命。神社境内 には、真新しい天穂日命像が白兎をお伴にして立っていた。 さて、岡山県北最大規模、美作加茂の万燈山古墳に 埋葬されていた土師質亀甲型陶棺の製作者であり被葬者 もまた、天穂日命を祖とする土師氏の人々だったと思う。 土師質の陶棺は、土師氏が製作して土師氏の長を葬った。 そして↓万燈山古墳は、土師氏一族の墓陵である… とは、しかし、どの資料にも記されてはいない。 古墳は加茂町の奥地の墓地に隠されるようにしてあり、 いまは地元老人会でも、被葬者を語る人は少ないという。 古墳と陶棺が造られた6世紀末、美作の地に 白猪屯倉(しらいのみやけ)という朝廷の直轄領ができた。 そこへ派遣された役人は百済の渡来人かと、前回書いた。 屯倉であれば、陶棺も製作できる規模の大型製鉄炉が あってもおかしくはないという説も紹介した。 ただし、おそらく役人は役人である。 陶棺を造る窯業の技術者(工人)ではないし、 被葬された「鉄王」でもあり得ないだろうと思うのだ。 そもそも、土師氏とは、埴輪の制作や祭礼に関する職分を 担当する品部だった。垂仁天皇妃・日葉酢姫命の葬儀に あたって、それまでの慣習だった殉死に替えて、埴土で人型の 埴輪を作って埋葬することを、土師氏の祖先である野見宿禰 が天皇に奏上したことが始まりだと言われている。 そのとき、百人の職工たちが出雲から都に呼ばれた。 つまり、垂仁の時代、出雲に埴輪作りは行われていた。 美作でも、産鉄や窯業は盛んだったと考えるのが自然だ。 美作という国名の起こりは時代降って和銅6(713)年。 それまでは吉備国だったのが、備前・備中・備後、美作 という4つの地域に分割された。吉備とは、それだけ 歴史が深く、鉄資源が豊富な強国だったわけで、ヤマト 王権が屯倉を置いたのは、その弱体化を図ったためだろう。 そして、美作に土師質・亀甲型・陶棺が誕生した。 わざわざ「・」を付けて区切ったのは、そこに後に 土師部となる「火の一族」の特性を強く感じるからだ。 埴土は『日本書紀』に曰く、スサノオが出雲に来たとき に乗った船の材質であり、亀は海人族のトーテムであり、 陶棺は、先史時代の家を模した家型埴輪に由来すると思う。 その陶棺は、南方の島々の家屋と同じく高床式である。 天穂日命とは、「火の神とホとヒ」で書いたように 琉球の祖神だったのだなと、加茂町で再確認したのだった。
by utoutou
| 2017-11-16 17:16
| 瀬織津姫
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Comments(2)
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たぬき
at 2017-05-07 20:52
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天穂日命。
キキ神話では天照大神の二男神。 穂火を、、、火火(ホヒ)の命/炎尊? ある伝承では、徐福(イザナギ、スサノオ、天照大神、月読。他)の配下(家臣)で出雲帝国をあわや転覆~簒奪するために掻き回した張本人、 当時の大国主神や事代主神(少彦名)を拉致幽閉して殺害してあわや事が成かに見えたが、出雲帝国の早急な巻き返しに逢って一味らはほうほうの体で帰国(イザナギの一度目の失敗やスサノオの高天原での乱暴狼藉~追放の行)
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utoutou at 2017-05-22 21:36
たぬきさま
返信が遅れまして申し訳ありません。天穂日命について書いて以来、体調がガタ落ちで大変でした。霊障というのでしょうか、時折、夢見が悪くなる場合があります。 さて、その火火の神を沖縄目線で見るならば、むしろ火を起こした最古の尊いお方のようにお見受けしますが。むしろ出雲がその存在を否定したがるほどの…。仰る伝承はどちらのものでしょうか?
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