CIAが封印した垣花の御嶽〈3〉

CIA基地の「Zエリア」だった垣花の御嶽のことは、
戦前、玉城に生まれたふたりの神女(かみんちゅ)の言い伝えを抜きにして語ることはできない。
が、その前に、垣花の御嶽の現状をレポート。
ゴルフ場の休業日にのみ許可される御嶽参拝。私は今回、玉城に住む知人に同行させていただいた。


垣花の御嶽、正面の威部(いび、至聖所)。
鳥居のように伸びた木の枝をくぐると、その先に見上げても全体が分からないほど巨大な磐座がある。
威部の前には香炉が置かれ、学校の講堂ほどの広さの空間は、木々が伐採され綺麗に整備されていた。
神女たちの秘伝では、1万年以上前に渡来した古代天孫氏の住まいであり、祭祀場であり、王族の墓。
まさかそんなに古い文明の歴史があるとは……。
玉城にかすかに残る伝承を、無理なく理解するようになるまで、思えば数年の歳月を要した。
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威部の前でふと足下を見ると、不思議な石があった。太い鉄管に貫かれている。
前回、ここに入ったときには気がつかなかったが、CIA基地の名残りか。
「川泉から水を引いていた跡か何かなんでしょうね」と、知人はあっさりと言った。
知人が基地の返還直後にここに来たときには、スパイ収容所の建物を壊したところだったらしく、
おびただしい数のバイプ建材や鉄線が、山積みになっていたのを目の当たりにしたという。
基地の撤去が急きょ決まり、慌ただしく去って行った状態を、如実に物語るエピソードだ。
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さて、語り部の宮里聡さんが神事についての教えを受けた、ふたりの神女について。
ひとりは、語り部が「ウフグスクのおばあ」と呼んだ大城ウメさん(のことはこちらにも)。
もうひとりは、語り部が「ナーカのおばあ」と呼んだ仲村ミエさん(のことはこちらにも)。
ふたりは平成の時代に入って相次いで亡くなったが、
琉球発祥の地の神女として、80歳を過ぎても御嶽廻りを欠かさない信念の女たちだったという。

ミエさんは、英祖王統4代・玉城王(1226〜36年)の末裔である
屋号、仲加(なーか)・根所(にーどぅくる)に嫁いだ。
ウメさんは、英祖王統5代・西威王(1328〜49年)の末裔である
屋号、新門(みーじょー)・上之当大城(いーのあたいのうふぐすく)に嫁いだ。
そして、仲加家(なーか)と新門家(みーじょー)の屋敷は、戦前まで玉城城のお膝元にあった。


玉城城一の郭から、改めて神女たちの屋敷跡を見てみる。 
眼下に走る道路が現在のグスクロード。グリーンの中、こんもりした森の手前に、
戦前まで玉城一区という集落があり、仲加家と新門家の両家は、その集落の中央で隣接していた。
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こんもりとした森を「中森の御嶽」(なかむいのうたき)という。またの名は「夜明けの御嶽」、
「根御嶽(にーうたき)」、あるいは「くし(後ろ)の御嶽」(家の後ろという意味)ともいう。
垣花の御嶽は、この中森の御嶽の後ろ側にあった。
さらに後ろの山は、玉城王と西威王父子の眠る宝城(タカラグスク)。
このタカラグスクを、おばあたちは「御先(うさち)ゆーどぅり(墓)」、また垣花の御嶽を「御先(うさち)垣花」とも呼んだ。
上古代からあった御嶽であるという伝承そのままに。
つまり、玉城台地の天頂に位置するこの一帯は、沖縄最古の文明の発祥地だった可能性がある。
CIAが置いた収容所の建物は数棟あったという説もあることから、
「Zエリア」とは、垣花の御嶽だけでなく、この聖域一帯を指していたのかもしれない。 

間違ってはいけないのは、英祖王統は、時を越えて再来した古代天孫氏の末裔らしいということ。
垣花の御嶽、タカラグスク、中森の御嶽は、沖縄の古い方言で「イリク」(新旧入り混じったお墓)。
古代王族の墓陵に、今来の王族が追いかけるようにして収まり、眠っている。
ウメおばあ、そしてミエおばあは、
うさち(古代)から連綿と続いた天孫氏=アマミキヨすべての御霊を祀った「最後の神女」だった。


グスクロードの始発地点である糸数に立つ案内板。
グスクロード沿いには、アマミキヨが築いたという糸数、玉城、垣花という3つの城跡がある。
道路沿いではないが、垣花城跡から徒歩数分の場所に、ミントングスクもある。
琉球発祥の地にあるこの道を車で走るとき、私はいつもザワついた気持ちに襲われる。
グスク群は海を見下ろす崖上に立っているが、それが要塞なら、いったい何を守ろうとしたのか。
もしや、うさち天孫氏の王墓を、外敵から守ることを目的として造られたか。
そしてCIAは、この一帯が最古の地であることを知っていたからこそ封印したのではないかと。
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# by utoutou | 2013-12-03 23:02 | 御嶽 | Trackback | Comments(2)