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六甲山と瀬織津姫 141 橘寺の謎

聖徳太子の生誕地にあるという橘寺(奈良県明日香村)
は、その真像を知るのに外せない場所ではないか…。

元々は太子の祖父にあたる欽明天皇と、その第四皇子
・用明天皇の別宮が置かれていたというから、いわば
代々の天皇に所縁の地。そこの厩戸で、散策中だった
 間人皇后は厩戸皇子(572〜622年)を生んだという。


寺の建立自体は、皇子の生誕から数十年後になるが、
その寺がなぜ、「橘寺」と命名されるに至ったのか?
(※未参観のため、画像は4travel.jp 様より拝借)
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如意輪観音菩薩が祀られるという本堂前の幕にも橘紋が
見えており、古来、橘の木は植わっていたものだろう。
それゆえか、用明天皇の和風諡号は「橘豊日天皇」。

太子妃にも橘大郎女(たちばなのおおいらつめ)がいた
というその名を法隆寺に隣接する中宮寺で聞いて以来、
「橘」が無性に気になった。もしやアマミキヨ関連かと。
その理由は後述するとして、天皇家にとって橘とは何か?

くだんの橘妃は、敏達天皇と推古天皇の第三皇子である
尾張皇子の娘という。皇女の名にもなぜ、橘の一字が?


私の参った神社では、誉田八幡宮(羽曳野市誉田)
の拝殿前で橘の樹を見た。主祭神は応神天皇である。
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「右近の橘」と、相対して右手に「左近の桜」があった。
京都御所・紫宸殿(ししんでん)に倣ったものか。
その元を辿ると、それは渡来人の秦河勝邸にあったといい、
またしても聖徳太子に辿り着いてしまうのである。
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誉田八幡宮で見た「たちばな」の家内安全御守り。
〜古来よりたちばなの花や実には神聖な場所を守る
力があるとされています。(後略)〜
古来、お正月に供える鏡餅に乗せるのは橘だった。
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ところで、「右近の橘」や鏡餅の由来とされるのは、
垂仁天皇が田道間守を常世の国へ遣わせたという故事。
非時の香菓(ときじくのかぐのみ)という不老不死の
霊薬を持ち帰らせたという話が記紀にあり、それが
「橘なり」と記されているが、どんな橘なのかは不明だ。

そもそもなぜ、田道間守は橘を探しに常世の国へまで
行ったのか。橘は上古から日本で自生する柑橘類である。
中国には漢時代から「橘井(きっせい)」の言葉がある
ほど薬効が認められていたが、橘はこの国にもあった。

そのことは、
廣瀬大社(奈良県北葛飾郡)の縁起にも見えている。
〜崇神天皇九年、廣瀬の川の里長に御信託があり、
沼地が一夜で陸地に変化し、橘が数多く生えたこと
が天皇に伝わり、この地に社殿を建て…(後略)〜

垂仁天皇は崇神天皇の次代であるから、田道間守は
別種の橘を探しに常世の国へと旅立ったことになる。

田道間守が十年かけて往復した常世の国とは琉球
ではなかったかと、私はかねてから考えていた。
 琉球には月橘(げっきつ)という橘が野生している。
現代の沖縄では石灰岩地帯の生垣や庭でも見かけるが、
分布範囲は東南アジア、中国南部、台湾、沖縄、奄美。


月夜に芳香を放つ常緑小高木の柑橘類で実は赤い。
別名「カラタチバナ」または「シルクジャスミン」。
沖縄の方言では、「ギキチャー」と呼ばれる。
(※画像は南城市「ガンラーの谷」ブログより拝借)
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月橘は霊力を発するとも言われ祭祀の供物になるほか、
薬草としては、胃腸カタル、腹痛、下痢に効くという。

その効用はヤマトの橘と大差ないように思われるが、
大きな特徴は、葉が3〜9枚ある「羽状複葉」ということ。
↓図の右上の「奇数羽状複葉」が、月橘の形状にあたる。
(※画像は「デジタル大辞典」より拝借)

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なんと、葉の付き方は「生命の樹」にそっくりだ。

エデンの園の中央に植えられていた生命の始まりの樹。
その実を食べると、神のごとき永遠の命を得られると
いう聖樹を、田道間守は持ち帰ったのではなかったか。
垂仁天皇の崩御には間に合わなかったけれども。

私には月橘(ギキチャー)が古事記で最初に登場する
天地創造の神=天御中主神に思えてならない。
橘寺で生まれた聖徳太子は、天御中主神の末裔か…?


# by utoutou | 2017-10-30 13:28 | 瀬織津姫 | Trackback | Comments(0)