12〜15世紀、東西軸の城を創建した按司(あじ、地方の首長・覇者)たちは 太陽を神と崇め、「てぃだこ」「てだこ」(どちらも「太陽の子」の意味)と呼ばれた。 沖縄では現在でも太陽が昇る東を「上がり」、太陽が沈む西を「入り」と呼ぶが、 これはまさしく太陽信仰の名残りである。 首里城(15世紀初頭の創建)にも、東西軸の意味を体感するために訪ねた(2008年)。 そして、あの平面測量図を開いた。図の中央の右、黒く塗られた縦長の長方形の部分が正殿。 その左にある大空間が「御庭」(うなー)。様々な王権儀式が行われた場所で、 目にも鮮やかな紅白の瓦がストライプ状に交互に敷き詰められている。 これは諸官が儀式で整列するための目印だったという。 ![]() 首里城正殿。謁見する諸官の目には、 王が姿を現す正殿は、このような構図で映っていた。 ![]() ![]() 首里城正殿内部(下の写真は1階)。階段を2階に登ると、日常的に王妃や身分の高い女官たちが使用した「大庫理(うふぐい)」があった。同じく2階には、国王が儀式を執り行った玉座「御差床」(うさすか)が、また2階南東に「おせんみこちゃ」と呼ばれる小部屋があった。次のように記された説明板が立っている。 〜ここは「おせんみこちゃ」と呼ばれる部屋で、国王自ら女官とともに毎朝東方に向って拝んでいたところである。 「御床」は神棚として神霊が祭ってあり、女官は抹香を焚いて「火の神」などを拝礼していた。身分の高い神女の就任式なども国王、王妃臨席のもとに、ここで行われた〜 「立ち入り禁止」のロープから身を乗り出して「おせんみこちゃ」の中を伺うと、 神棚の上に置かれた金の香炉が見えた。 国王が毎朝拝礼していた「火の神」(ヒヌカン)を表しているのだろう。 沖縄では、家庭の台所に太陽霊の分身としての「火の神」の香炉を祀るのが一般的。 ただし、本来のそれは現在よく言われるような「竃(かまど)の神様」ではない。 聞得大君(きこえおおきみ、琉球王府最高の女神官)が祀る祭神は、 『琉球国由来記』によれば、御日御月の御前(おちだおつきのおまえ)と、御火鉢の御前の2柱だった。 いっぽう『女官御双紙』によると、次の3柱となる。 ・御筋の御前(みすじのおまえ) ・金之美御筋の御前(かねのみおすじのおまえ) ・御火鉢の御前(おひばちのおまえ) 折口信夫(しのぶ)氏は『琉球の宗教』(1995年、中央口論社、初出は1923年)でこう記した。 伊波普猷氏は、御すぢの御前を祖先の霊、御火鉢の御前を火の神、 金の美御すぢを金属の神と説いて居られる。 前二者は疑ひもないが、金の美おすぢは、日月星辰を鋳出した金物の事かと思はれる節 〔荻野仲三郎氏講演から得た暗示〕がある。併し型どほりに解すると、 かねは、おもろ・おたかべの類に、穀物の堅実を祝福する常套語で、 又かねの実ともいふ。みおすぢの「み」が「実」か「御」かは判然せぬが、 いづれにしても、穀物の神と見るべきであらう。 或は、由来記を信じれば、月神が穀物の神とせられてゐる例は、各国に例のあること故、 御月の御前に宛てゝ考へることが出来さうである。 御すぢの御前は、琉球最初の陰陽神たるあまみきょ・しねりきょの 親神なる太陽神即、御日御前を、祖先神と見たのだと解釈せられよう。 祖先神である太陽神、太陽霊としての火の神、そして御日御月神。 要するに、方角は東南方向の重視となる。 国王が百浦添(もんだすい、正殿のこと)の東南に位置する「おせんみこちゃ」で、 聞得大君や女神官が同席するなか金の香炉に受け止めたのは、 まさしく太陽神の霊力(せじ、エネルギーの意味)だった。 だからこそ、首里城の向きは太陽が最大となる夏至の方向でなくてはならなかった。 国王は「おせんみこちゃ」での朝の拝礼が日課だったという。 朝日から太陽神の霊力を満身に受けた国王は、 今度は聖なる東方を背負い、御庭で行われる儀式に臨んだのだ。 各地に築城された城の東西軸は、太陽王のカリスマを示す壮大なる装置だった。 首里城の東には美福門が、その外郭に経世門があった。 新しい王はこの東門から入城する掟があった。 まさに「てぃだが穴」から、天と地を押し分けて太陽が昇るかのように。
by utoutou
| 2014-09-19 11:19
| 城(ぐすく)
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