「来年は午年でしょ。私もイザイホーを見に行きたい」
ブログを始めてから、そんなメッセージが友人から届いたが、 残念ながら1978(昭和53)年で、イザイホーは途絶えた。 もし復活するなら私だって見てみたいが、それは無理な話。 戦後初のイザイホーが1954(昭和29)年に行われたとき、 神女(ナンチュ。島で生まれた30歳から41歳の女性) として祭りに参加した女性は100人いたという。 が、1966(昭和41)年には半減、最後のイザイホーでは8人に。 現在、島に住む有資格者はわずか1名である。 「イザイホーとは、つまり何?」という質問もいただいた。 私が考える「竜蛇の祭り」説はさておき、 神女の就任式、祭祀組織への加入式、王権儀礼と、 その意義はいろいろあるが、イザイホーの本質を説いた学者はいない。 そんななか「イザイホーとは“探し求める火”」と語ったのは、 ミントングスク先代当主の知念幸徳氏(『沖縄県久高島資料』66年、白帝社)。 「火」とは「女」であり「霊」、神女たちが祖霊を求め、 出会い、そして祀るという意味だろう。 神女は祖神霊のサポートを得て家を守り、クニ(島)を守り、 王朝時代にはその繁栄を霊的に支えた。 彼女たちは主婦でありながら、現人神となり、巫女となり、祭司となったのだ。 イザイホーの話をしていると、宿主が勧めてくれた。 「神様と出会いたいなら、自分の好きな場所でお祈りしたら」 そんなわけでよく行くのはウパーマ浜。島の北端・カベール岬近く。 で、神様と出会えたか? その話はいずれ…ということで。 ![]() ウパーマ浜で、アイデアならひょっこり舞い降りてきた。 そして書いた本が『奇跡のカフェ 沖縄「浜辺の茶屋」物語』 (2008年、河出書房新社)だった。 店はオーナーの完全なる手作り。 開け放たれた窓から、海と向き合う醍醐味が口コミで広がり、 沖縄南部のロケーションカフェ・ブームの先駆けとなった「浜辺の茶屋」。 ![]() その本が、語り部との出会いを取り持ってくれる結果になり、 何年間もこうしてアマミキヨを追っているのだから、それこそ神の采配? オーナーの稲福信吉さんが「相談したい神人(かみんちゅ)がいる」 と紹介されたのが宮里聡さんだった。私が御嶽についても書いたため 「これは神事だから出版の吉凶を宮里さんに観てもらおう」と。 稲福さんは言った。 「自分は神事に興味はないが、宮里さんの“見える能力”は別。 眼の前で確認してしまったからには、信じないわけにはいかん」 稲福さんが宮里さんの超能力を間近で見たのは、10年ほど前、 浜川御嶽でのことだったという。アマミキヨが仮住まいをした聖地。 が、海から登る坂道には壊れた手作りプールがあり、足場が不安定だった。 ↓ きれいに整備された現在の石段。 ![]() 稲福さんらが整備を思い立ち、白羽の矢を立てたのが窪田繁雄さん。 石積みにかけては右に出る者なしという実力派の庭師である。 地鎮祭は、皆から神人と呼ばれる宮里さんに頼んでいた。 その日、海に一礼した宮里さんは、のたまった。 「石積みをするのはクボタシゲオ。住所は南城市…本籍は…」。 驚いたのは当の窪田さん。隣にいる稲福さんに囁いたという。 「なんで、あんたは俺の住所本籍まで人に教えるか」 今度驚いたのは稲福さんで、目を丸くして否定した。 「俺じゃないよ。だいたい俺は、あんたの本籍を知らない」 後で宮里さんは言った。 「眼の前にお爺さんがふたり現れて、若いほうのお爺さんが住所と本籍を教えた。 窪田さんのお父さんでした。私はそれを言っただけですよ」 その父こと故窪田道全氏は、玉城の歴史伝承を綴った書『如件』 (くだんのごとし)を遺した人物。生前よく言っていたという。 「ミントングスク、ヤハラヅカサ、浜川御嶽は、大切に守れ」と。 神霊と交信する男・宮里聡さん。 彼はこの沖縄発祥の地・玉城に呼ばれた男でもあった。
by utoutou
| 2013-09-10 15:27
| 語り部
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Comments(2)
![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
神楽さん コメントありがとうございました。また、返信がたいへんたいへん遅くなり失礼しました。その後、玉城へはいらっしゃいましたか? 先日沖縄で、このブログの読者だと仰る方に偶然お会いして驚きました。神楽さんともどこかでお会いするかもしれませんね。今後ともよろしくお願いします!
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![]() by utoutou
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