9月16日(旧暦8月12日)、久高島にいた。
八月祭りの最終日。 テーラーガーミ(太陽神の祭り、50歳から70歳の男性が参加) は15時からの予定だったので、朝の船で本島に出た。 午前中いっぱい御嶽廻りをしても、テーラーガーミには十分間に合う。 さて、どこを回ろうか? 安座真港に停めたレンタカーに乗った途端、行き先は決まった。 国道331号線を南下して薮薩の御嶽(やぶさつのうたき)へ。 琉球王府の正史によれば、琉球七御嶽のひとつ。 神女のウメおばあによれば、琉球最古の御嶽。 14歳のサトシ少年が、最初に案内されたのがこの御嶽だった。 薮薩の御嶽。うちなー口では「やふぁさちのうたき」。 御嶽の先は崖。手前の広場はカフェ「やぶさち」の駐車場。 車が隙間なく並ぶランチタイムには間がある。カフェはサトシ少年が 初めて来た当時にはなく、背丈以上ある草木を掻き分けて歩いたという。 ![]() 朝9時前、御嶽に入った。 木漏れ日が可愛く揺れる、誰もいない聖なる森。のはずが、 先客がいた。聞けば我那覇麗愛(がなは・れな)さんという。 「3ヶ月前から御嶽廻りを。きょうは初めてここに」と。 聖地に呼ばれた人。彼女もスピリチュアルな道に進むらしい。 「これからの人生、御嶽で神々を鎮めて歩きたい。今とても幸せ」 と、ピュアな笑顔。 36年前のその日、サトシ少年も幸せを噛みしめていたに違いない。 彼女と意味は違っても。何年も自分を苦しめた夢。 その謎が解明されるときは、刻々と近づいていた。 「声」が語りかけていた。次はヤファサチノウタキへ、と。 「おばあ、ヤファサチノウタキというのはどこ? そこに行けって」 驚いたのはウメおばあ。サトシ少年の手を引くと黙々と歩き始めた。 百名のバス停を海方向へ曲がり、細いワイトイ道(切り通し道)を下る。 現在ある団地の建物はなく、道なき道を、鎌で草木を切り倒しながら。 そして、薮薩の御嶽(やぶさつのうたき)に。 ウメおばあが香炉に向って拝むと、サトシ少年もその所作にならった。 「このヤファサチは、とても肝心なところだよ」と、ウメおばあ。 「声」がまた、サトシ少年に語りかけたという。 「ここは、百名の古島(ふるしま)。ウサチミントン」 「おばあ、古島とか、ウサチミントンとも言うんだって」 「そうだよ。最初にできた集落のことだねえ。 あいえなー、うすりいっちょーいびん(たいへん畏れ多いことです)」 ウメおばあは、かしこまって一礼した。 「ウサチって、何?」 サトシ少年は神託の意味を問うた。 「ウサチとは、御先と書く。何千年も前ってことさ」 「へえ、そんなに古い場所なんだね」 薮薩の御嶽の左手眼下には、久高島の始祖ファガナシーとシラタル夫婦 が船出した水堅浜(みでぃきんぬはま)が見える。 陸続きの島(手前)はアージ島。水平線に浮く久高島が遠望できる。 ![]() ウメおばあは、サトシ少年を諭すように言った。 「薮薩の御嶽と斎場御嶽は一対だよ。でも最初に拝むのはここ。 斎場御嶽だけ拝んでも弥勒世(みるくゆー、平和な世)は開かない」 渡来したアマミキヨを鎮めるための参拝には順序があるのだと。 「そして、ほら、そこの海に立っているのが、ヤハラヅカサだよ」 「知ってる。海に立っている石でしょ」サトシ少年は歓喜した。 薮薩の御嶽からヤハラヅカサの海を見る。環状の列石はストーンサークル だと、与那国海底遺跡の調査で知られる木村政昭琉大教授は言った。 古代、ヤハラヅカサはその真ん中に? 現在は右端にある(尖った石)。 ![]() 翌日、那覇で会った宮里さんは言った。 「当時は、薮薩の御嶽からヤハラヅカサへと下る道もあったんです。 薮薩の御嶽から歩いてヤハラヅカサが見えたとき、私は叫んでました。 この海だ、この海だ、自分が見たのは絶対にここである(笑)。 天も地も自分のものかと思うほど嬉しかった」 36年の歳月が流れたが、宮里さんへの「声」は止まない。 先日も「薮薩の御嶽」と聞こえ、この地を訪れた宮里さんは新発見をした。 「薮薩の御嶽の中に空洞を見つけたんです。下り口でした。 少し下ると、大きなガマ(洞穴)の遺跡があるのが分かった。 「アマミキヨが住んでいた古島ということですか?」 私の胸は、高鳴った。 何千年かの歳月を経て、今は忘れられた御嶽。 アマミキヨが仮住まいした所は、歴史書にある浜川御嶽だけではない。 アマミキヨ(族)は分散して住んだ? 次回の旅では、そこへ行こう。 国道331号にかかる下田高架橋。橋がなかった時代は、 集落から海へ、また集落へと道を「縦移動」したが、今は車で「横移動」。 ![]()
by utoutou
| 2013-09-19 20:59
| 語り部
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