1週間前の9月16日(旧暦8月12日)。
神の島・沖縄久高島でテーラーガーミ(太陽神の祭り)。 日没迫る夕刻。西日を背に祭りを追う者たちの影も長い。 写真右端、マイク持つ影はドキュメンタリー映画のクルー。 数日間行われた「八月祭り」の最後を飾る男たちの祭り。 テーラーは太陽、ガーミは神、テーラーガーミとは太陽神のこと。 島の大主(ウプシュ、50歳〜70歳の男性)たちは 今、太陽の霊力(しじ)を受けたテーラーガーミとして、 第二祭場であるユラウマヌ浜(王府時代の君の泊、現在は漁港) を出て集落を行進。悪霊を祓いをしているところだ。 テーラーガーミのティルル(神歌) を歌いながら練り歩く大主(ウプシュ)たち。年齢順に並び、 扇を上へ下(胸の前)へと振る。その動作は「お祓い」の表現。 ![]() そのお成りを、島の人々は木陰に座って見守っていた。 ソールイガナシー(神職)の経験者であるおじいが来て怒った。 「太陽神たちを座って拝むとは何事か」。怒るのも無理はない。 ソールイガナシーはテーラーガーミと関係が深く、古くは、 この祭りの第二祭場(ユラウマヌ浜)で神事を司祭していたのだと。 ソールイガナシーは龍宮神を司る神職。そして、 「それはアカララキを仕切っていたということでもあったよ」 と言うのだ。これはとても重要な情報。 アカララキとは「ミントンの娘とイザイホー〈5〉」の項(←こちら)で書いた、 かつては「門の番」(じょうのばん)とも呼ばれた御嶽(うたき)。 降臨する神は、生命の根源を司る縄文の女神。男たちは 女神アカララキに導かれ、島を守護する太陽神として転生したのだ。 では、その源になる太陽神とは? ヒントはティルルの中にありそうだ。 【テーラーガーミのティルル】 ハチガツヌハジマリ ヘイ(八月のはじまり) テーラーガーミ スルティ マブル ヘイ ※囃子「太陽の霊威を受けた男たちが揃ってこの島を守る」 ハチガツヌシバサシ ヘイ(八月の柴差し) アムトゥカラアサンハリ ヘイ(元家から各家まで) タティマンヌワカグゥラー ヘイ(ソールイガナシーは) シマハニティイモーリ ヘイ(島を囲ってきて下さい) クニハニティイモーリ ヘイ(国を囲ってきて下さい) ナガハマニムチウルチ ヘイ(長浜に持ち降ろして) サウルカラクダユル ヘイ(サウルから下った) アカワンヌユナワシ ヘイ(赤碗の世直し) ヤマトカラクダユル ヘイ(大和から下った) クルワンヌユナワシ ヘイ(黒碗の世直し) ※柴差し=悪霊祓い。スゥバ(茅) 奇数本に桑の葉を束ね、屋敷の四隅の軒先などに差す。 ※ソールイガナシー=村頭を経て就任する男性神職者。 龍宮神とアカララキを司祭する。 ※世直し=神酒(ウンサク)を神に供えるための容器、 木製大椀(沖縄大百科事典より)。 ♪サウルから入った赤碗の世直し。大和から入った黒碗の世直し。 意味深な、赤椀と黒椀の対比。 赤椀の「サウル」(ソウル)とはどこを指すのか。 その謎を解きたくて、久高島に足を運んだのだった。 島の古老は「サウルというのは唐、中国のことだよ」と言った。 「昔のウチナーンチュは、外国とは中国のことだと思っていた」と。 まさに定説。が「サウル」に関する新情報は得られず、謎は深まる…。 テーラーガーミの第一祭場・ハンチャアタイ(神の畑)。 午後5時、大主(ウプシュ)たちが黒い着流しに草履履きで集合。 手には赤丸の描かれた扇。午後3時開始の予定だったが、 司祭する外間根人(ニーチュ)が体調不良のため遅れた。 根人と大主たちがハンチャアタイに着座。神酒を交わし、ティルルを唱和。 ![]() 下は、いつものハンチャアタイ(神の畑)。 左下の石山は「天の門」(てぃんぬじょう)と呼ばれる拝所。 「天と地をつなぐ石」。神社によくある「さざれ石」と似ている。 ![]() テーラーガーミでは「天の門」に、ふたつの赤椀(大椀)が供された。 ティルルに謡われた赤椀・黒碗(神酒杯)か。しかし見た目はいずれも赤。 ユラウマヌ浜(比嘉康雄氏著『神々の原郷 久高島下巻』93年、第一書房)。 後ろがアカラムイ(森)。ここには古代祭祀を知る鍵があると思う。 琉球王朝の繁栄を支えた神の島。その古層には古代の神々が眠る。 ![]() イザイホーが神女たちが蛇神になる祭りであったように、 テーラーガーミでいう太陽神とは龍蛇神のことだと思う。 テーラーガーミもバイカンヤー(イラブー海蛇の薫製小屋)のある 御殿庭を第三祭場とし、ニライカナイの神様への報告で終了。 このイラブーの乾燥小屋、別名を「タルガナー」(神様)という。 凪いだ海の西、斎場御嶽に太陽が沈む。 祭りの後、女人解禁となったユラウマヌ浜で「角力大会」が始まった。 ミナーラ川(洞穴)の上に立って、子どもたちの声やどよめきを聞く。 ![]()
by utoutou
| 2014-09-18 22:28
| 久高島
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