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甦る古代琉球〈6〉大陸渡来のワニ氏はアマミキヨ?

『契丹古伝』は、東大神族(=しうから、古代倭族)をこう説明する。
「殷の時代には大諸候だったが、周になってから(※紀元前1046年〜)
の天変地異とともに没落し、西族(漢民族)によって中原を追われた」

そのうちの一種族・潢弭(ワニ)を、後の大和豪族・和邇(ワニ)氏では
ないかと記したのは、他でもない著者の浜名寛祐氏だが、いま『契丹古伝』
を改めて読み返してみて、あることに気がついた。浜田氏は『古事記』の
神話に登場する鰐と「和邇」の関係をあらかじめ認識していたようだ。

『契丹古伝』第三巻「邪馬駘記」の第八章「七種族の名称原義」のくだり。
著者解説の部分を以下引用(かつ赤字に)してみると、そのことが分かる。

漢族の史書には此の族に関することが何もなく、唯本頌叙(※この本)にのみ
其の名が見えて、且つ後章に黄浮海といふことが記してある。この海に浮かぶ
といへば普通東へ去ることになっているから、もしや我が國へ来たのではある
まいか(略)。我が神話は和邇(鰐)に由りて頗(すこぶ)る賑かにされてあり、
そして潢弭と和邇との称合契合が妙に不思議を感じさせる。
人も知る如く大国主神の伝に、兎と鰐の話があって、兎はを欺きそれに乗って
海を渡り、は欺かれるを憤って兎の皮を剥いだとある。
また一つは天孫瓊瓊杵尊命の御子穂穂手見命が海神國(わたつみのくに)に赴き、
王の女豊玉姫と婚し、三年が間その國に滞留し、一尋和邇に乗って、媛もろとも
帰国されたということである。媛は妊娠し、願わくば妾(あ)の産みなん形を勿
(な)見たまひぞと云ひて、産殿(うぶや)に籠れるを命伺見(みことかきま)
えば、媛は八尋の和邇に化(な)っていて、伺見られしをいとはずかしとあって
返り(※ママ)去られた。その産まれませる御子こそ神武天皇の考皇(ちらぎみ)
にましますとのこと、この神話を如何に見るべきか。

ことに後半の2ヶ所。ワニを「鰐」や「鮫」でなく「和邇」と記したのは、
「神武天皇の祖母・豊玉姫は和邇の娘」であると、元々知っていてのことか。
思えば『海上の道』の柳田國男氏も「鰐は和邇氏の祖霊である」と記した。

生年を調べると、浜名氏1864(元治元)年生まれ。柳田氏1875(明治8)年生まれ。
明治・大正を生きた軍人・知識人は渡来の「和邇氏」について熟知していたらしい。

南城市の大里城跡(一の郭付近)。この大里が、語り部の口伝にあるように、
東大神族(しうから)の里だとすれば、菊紋+巴紋によるアマミキヨの神紋や、
天孫氏王朝25代の位牌が祀られている拝所「天代大世(あまよたいせい)」の謎
が解けるかもしれない。つまりアマミキヨは大陸から渡来したワニ族なのか?  
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さて、和爾氏が天皇の后を9人も出したとの記述があるのは、岸俊夫氏の
『ワニ氏に関する基礎的考察』という論文だが、縄文時代におけるワニ氏
について詳しいのは、宇佐神宮宮司家嫡男で宇佐国造57世の宇佐公康氏著
『宇佐家伝承 古伝が語る古代史』(1990年、木耳社)だ。以下まとめ。

・和邇族は、後期石器時代に朝鮮半島から日本列島に渡来した。
・邪馬台国の時代以前から大陸と交流して繁栄していた。
・今から2400年前の縄文時代晩期、すでに大和地方に定着していた。
・奈良県天理市櫟本町和邇を本拠とし、部族による村から氏族による大集落を
 形成していた。族長は孝昭天皇。山城・近江・尾張へと次々に進出した。
・和邇一族の墓所である東大寺山古墳群から、後漢・霊帝時代の大刀が出た。
・海洋民族で、カヌーのようなワニ舟で海岸から上陸。土地を開拓した。
・古代の漁労や海運を業とした「海氏」「海部」のもっとも古い祖先で、その
 祖神はワニ神という海神で水の神である。
・紀元前3世紀から、数千年続けてきた漁労・採集を稲作・農耕に転換。
 農具・武器・刀をつくり、神に捧げる神酒を盛る土器をつくった。

こちら大里にある島添大里グスクの西端に位置する「カニマン御嶽」。
説明板には「由来は不明」「昔の偉人を祀ったお墓」とあるが…。
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「カニマン」とは、沖縄の方言で鍛冶屋のこと。カニマン御嶽は各地にあるが、
伝承では「御先(うさち)カニマン」(=縄文時代の鍛冶屋)とも呼ばれる
のはこの大里はじめ数えるほどの御嶽しかない。偉人とは、はたして誰?

大里城跡の頂上「ウティンチヂ」からの眺め。北西方向に中城湾を抱えている。
このすぐ西に島添大里按司の墓、さらに西に旧日本軍の砲座壕跡がある。
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by utoutou | 2014-05-17 20:43 | 天孫氏 | Trackback | Comments(0)
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