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久高島の夜明け〈3〉御嶽のマリア

7年前、ウパーマ浜に至るには、御嶽廻りというアプローチが必要だったらしい。

1ヶ所目。神人は私を島の西海岸にある、聖なる川泉ヤグルガーへと案内した。
見下ろす海は今年の旧正月に撮影したものだが、あの日は夕陽に照り映えていた。
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神女の就任式イザイホーを除き、島の年中神行事の前にはいつも、
白衣に身を包んだ島の女たちがこのヤグルガーで ↓ 禊ぎをしたという。
作法を知らない私は、備え付けの杓子で水を汲み、神社の手水舎でやるように手と口を浄めた。

今だから分かる禊ぎの意味。神霊からの霊力(しじ)を受け継ぐための準備。
最大の霊力とは、例えば神が宇宙を創造した始源の力。それを受け取るための潔斎である。
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2ヶ所目は島のほぼ中央にある「中の御嶽」へ。ヤグルガーから至近。一体となっている印象。
久高島至高の御嶽といえば「フボー(蒲葵)御嶽」だが、ここはその拝殿のようだ。
「ご挨拶を…」と神人が言ったので、私は石香炉に向って手を合わせ住所と名前を呟いた。
「神の島」にお邪魔しているまっとうな旅人になれた、かもしれない。
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3ヶ所目に廻ったのは、聖母マリアの祀られる御嶽。
深い茂みに分け入った先の名も知らない御嶽に、高さ30㎝ほどのマリア像が立っていた。
久高島に隠れキリシタンの歴史があるわけではない。
伊敷浜に漂着した陶製のマリア像を救い上げた島人が、森の奥深く祀ったという現代の神話。

最近、御嶽からある屋敷に遷され、こうして手厚く祀られ、神々しい立ち姿を現している。
「光あれ」という涼やかな声が響き渡るような気がする。
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それにしても、私はなぜ「御嶽のマリア」へと導かれたのか。
神人がこのマリア像を「宇宙のマリア」と呼んでいたことを思い出す。
歳月を経て、あの御嶽廻りの最終地ウパーマ浜に戻り、その意味も少し分かった気がした。

宗教によらず、天に在る女神こそが「天祖(てんそ)」と呼ばれる。
たとえ呼び名がいくつあっても「神様は元ひとつ」と、神女ウメおばあは語り部に言い遺した。
天祖=天つ祖(おや)の住む宇宙を、琉球の古代人は「ニライカナイ(常世)」と観念したと思う。
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あの夜の白髪仙人が脳裏をよぎった。舞い降りて来ることはなかったが。
轟々たる波の音を伝えよ…で始まるメッセージには、重要な続きがあったのだろう。
by utoutou | 2014-07-08 06:08 | 久高島 | Trackback | Comments(0)
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