太陽と月に挟まれた星、 地球に生を受けた「人」。 「人」は「霊止(ひと)」に通じると、 語り部から以前にも聞いたことがある。 何万年、何百万年のことになるのか…。 そういう言い伝えが沖縄にはあったと。 沖縄の開闢物語は、神話ばかりでなく、 ときに歴史として語られるが、 ナーワンダーの岩陰に並ぶ3つの香炉は、 壮大な宇宙を思わせる配置にあった。 本来の意味で、 3つの香炉は「火之神(ひぬかん)」なのだ と、語り部は言う。沖縄の家庭では、 台所のガスコンロの奥に香炉を祀り、 それを「火之神」と呼んで家内安全を祈願するが、 古来の呼称は「おみちむん」。 「3つのもの」、 つまり3つの石を御神体として崇めていたという。 首里城の祭祀部屋「おせんみこちゃ」にも、 「おみつもん」と呼ばれる3つの金の香炉 (御日御前・御月御前・御火鉢御膳)が祀られていた。 これまで多くの学説によって 様々に解釈されてきたが、 実際にナーワンダーの巨岩に身を置き、 「おみつもん」と対峙すると、 「太陽・月・そして星(地球)」という説明が、 とてもしっくりと馴染む。 琉球王朝による「日月星辰」信仰のかたちが、 ナーワンダーに具現されている。 やはりここは斎場御嶽の奥宮なのだと思う。 ナーワンダーグスクの3つの香炉はこの東の海、 ニライカナイに向って並んでいる。 左手の崖上には鏡。王府時代、 日月星辰への信仰をノロ(巫女)は赤衣で司祭した。 ![]() 語り部に聞いた。 「日月星は分かりました。では、辰は何の意味?」 「太一でしょうね」 「たいち…北極星?」 「そうです」 なるほど。 古代中国では北極星を中心に星々が巡る ことから、北辰とも呼んだ。 いわば、宇宙の要。天帝。 道教にいう太一神である。 陰陽道においては、 太一は宇宙生成と森羅万象を司る神。 ただし、琉球の伝承では、あまり聞かない呼称だ。 「太一、他に呼び名はありますか?」 「アマテル、天照大神ですね」 「アマテル! あぁ、天照」 それなら分かると、思う。 沖縄の伝承にいう「アマテル」とは、 女神ではない。 国家神道における皇祖アマテラスが、 ヤマトに誕生する前の男神。 語り部が交流した神女のおばあたちは、 みなアマテルを男神だと信じていたという。 太一で思い出したのが、 伊勢神宮別宮である伊雑宮(いざわのみや)。 毎年6月に行われる、御田植祭を思った。 見学したことはないが、竹取神事の… 男たちが泥んこになり奪い合う大団扇に「太一」と、 見た覚えがある。 ![]() それを言うと、驚くべき推理が飛び出した。 「ナーワンダーの祭祀は、古代の海人によって、 伊雑宮に運ばれたと思います」 「おみつもん信仰が、黒潮に乗って!?」 考えてみれば、古代海人族の祖は おしなべて「アマテル」である。 尾張氏の祖・火明命は「天照国照彦」。 物部氏の祖・ニギハヤヒも「天照国照彦」。 そうすると伊雑宮の「太一」は、本来、 男神の「天照」だったいうことになるか。 9月の沖縄旅は、伊勢への旅に変更するかなと、 ナーワンダーを下山して思った。 斎場御嶽下の「あざまサンサンビーチ」。 古の久手堅の泊(港)。 海人族はこのあたりから、さらなる東方へと出帆した? ![]() ※投稿日が2015年8月になっているのはカテゴリを変更したためで、 ナーワンダーグスクに登頂したのは、'14年8月27日のことでした。
by utoutou
| 2015-08-26 13:35
| ナーワンダーグスク
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