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ナーワンダーグスク登頂〈5〉天照(アマテル)は男神

太陽と月に挟まれた星、
地球に生を受けた「人」。
「人」は「霊止(ひと)」に通じると、
語り部から以前にも聞いたことがある。
何万年、何百万年のことになるのか…。
そういう言い伝えが沖縄にはあったと。


沖縄の開闢物語は、神話ばかりでなく、
ときに歴史として語られるが、
ナーワンダーの岩陰に並ぶ3つの香炉は、
壮大な宇宙を思わせる配置にあった。


本来の意味で、
3つの香炉は「火之神(ひぬかん)」なのだ
と、語り部は言う。沖縄の家庭では、
台所のガスコンロの奥に香炉を祀り、
それを「火之神」と呼んで家内安全を祈願するが、
古来の呼称は「おみちむん」。
「3つのもの」、
つまり3つの石を御神体として崇めていたという。


首里城の祭祀部屋「おせんみこちゃ」にも、
「おみつもん」と呼ばれる3つの金の香炉
(御日御前・御月御前・御火鉢御膳)が祀られていた。


これまで多くの学説によって
様々に解釈されてきたが、
実際にナーワンダーの巨岩に身を置き、
「おみつもん」と対峙すると、
「太陽・月・そして星(地球)」という説明が、
とてもしっくりと馴染む。
琉球王朝による「日月星辰」信仰のかたちが、
ナーワンダーに具現されている。
やはりここは斎場御嶽の奥宮なのだと思う。



ナーワンダーグスクの3つの香炉はこの東の海、
ニライカナイに向って並んでいる。
左手の崖上には鏡。王府時代、
日月星辰への信仰をノロ(巫女)は赤衣で司祭した。
ナーワンダーグスク登頂〈5〉天照(アマテル)は男神_a0300530_1726910.jpg



語り部に聞いた。
「日月星は分かりました。では、辰は何の意味?」
「太一でしょうね」
「たいち…北極星?」
「そうです」 
     
なるほど。
古代中国では北極星を中心に星々が巡る
ことから、北辰とも呼んだ。
いわば、宇宙の要。天帝。
道教にいう太一神である。
陰陽道においては、
太一は宇宙生成と森羅万象を司る神。
ただし、琉球の伝承では、あまり聞かない呼称だ。

「太一、他に呼び名はありますか?」
「アマテル、天照大神ですね」
「アマテル! あぁ、天照」

それなら分かると、思う。
沖縄の伝承にいう「アマテル」とは、
女神ではない。
国家神道における皇祖アマテラスが、
ヤマトに誕生する前の男神。
語り部が交流した神女のおばあたちは、
みなアマテルを男神だと信じていたという。


太一で思い出したのが、
伊勢神宮別宮である伊雑宮(いざわのみや)。
毎年6月に行われる、御田植祭を思った。
見学したことはないが、竹取神事の…
男たちが泥んこになり奪い合う大団扇に「太一」と、
見た覚えがある。
ナーワンダーグスク登頂〈5〉天照(アマテル)は男神_a0300530_17595529.jpg
※「皇大神宮別宮 伊雑宮のしおり」(神宮司庁)より借用


それを言うと、驚くべき推理が飛び出した。
「ナーワンダーの祭祀は、古代の海人によって、
伊雑宮に運ばれたと思います」
「おみつもん信仰が、黒潮に乗って!?」


考えてみれば、古代海人族の祖は
おしなべて「アマテル」である。
尾張氏の祖・火明命は「天照国照彦」。
物部氏の祖・ニギハヤヒも「天照国照彦」。
そうすると伊雑宮の「太一」は、本来、
男神の「天照」だったいうことになるか。


9月の沖縄旅は、伊勢への旅に変更するかなと、
ナーワンダーを下山して思った。
斎場御嶽下の「あざまサンサンビーチ」。
古の久手堅の泊(港)。
海人族はこのあたりから、さらなる東方へと出帆した?
ナーワンダーグスク登頂〈5〉天照(アマテル)は男神_a0300530_181682.jpg


※投稿日が2015年8月になっているのはカテゴリを変更したためで、
ナーワンダーグスクに登頂したのは、'14年8月27日のことでした。
by utoutou | 2015-08-26 13:35 | ナーワンダーグスク | Trackback | Comments(0)
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