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伊雑宮と猿田彦〈12〉猿田彦と「日巫女の鏡」

どうして「鏡楠」というのか。
頭の隅に引っかかっていた疑問が解けてスッキリした。
伊雑宮に立つ、樹齢不詳でオブジェのように巨大な楠のこと。

神宮創建以前の伊勢の信仰を書いた『アマテラスの誕生』
(筑紫申真氏、講談社学術文庫)に「木と鏡」との項があったと
思い出して、広げてみると、やはり…。

筑紫氏は皇祖アマテラスは天武・持統時代に
創作された神で、それ以前の伊勢地方で
信仰されていたのは、太陽の魂(スピリット)を持つ
天照大神と猿田彦という男性神だという論を展開、
一時、伊雑宮の祭神とされた玉柱屋姫は日巫女だったという。
つまり「鏡楠」は、神の依り代としても機能していたと。

以下、引用。

〜皇大神宮の別宮の伊雑宮の森には、
巨大なクスノキがそびえ立っています。
この木は、カガミクスノキ(鏡楠)と呼ばれています。
むかしはこの一本の樹木に、ほんとうに鏡をかけて
アマテラスのカミまつりをしていたのかもしれません。
あるいは、カミのよりつくこの木は、
鏡のかけられている木とおなじ意味のもの、
という意識でもって、鏡を実際はかけずにでも、
カガミクスノキとよんだのかもしれません。〜

筑紫氏によれば、
天照大神(男)と猿田彦は同一の神で、
冬至の頃、真冬に祀られたのがアマテラス、
夏至の頃に祀られたのが猿田彦だったという。

いっぽう、日巫女は玉柱姫であり、天の岩戸に祀られた
泣沢女神であり、美都波女神であり、瀬降津姫であった。
また神衣を織る棚機女(たなばたつめ)でもあった。
そんな古代の司祭者であった日巫女たちの祭具は、
鏡であり機織り機だった。

そこで思い出すのは、
沖縄・斎場御嶽の奥宮ナーワンダーグスク。
かつてイナグ(女)ナーワンダーの古墓からは、
人骨とともに機織り機が発掘されたといい、
また頂上には、いまも鏡が安置されている。

「日巫女の時代」を共有する伊勢と沖縄。
海人族がもたらした古代信仰の親和性は、
土地土地に染みついている気がする。


伊雑宮の鏡楠。最近は「バワーツリー」として有名。
伊雑宮近くの「倭姫旧跡地」にある楠もまた「鏡楠」と呼ばれる。
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伊勢古道の途中、伊雑宮を眼下に見下ろす鸚鵡岩からの眺め。
青峰山を遠望。山頂の正福寺は十一面観音を安置。
神仏混淆時代の瀬降津姫、水(滝)の巫女である。
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鸚鵡岩は和合山に抱かれるようにあり、玉依姫を祀るお宮がある。
玉依姫とは「玉(霊魂)の依りつく巫女」のことだそうだ。
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by utoutou | 2014-12-18 21:05 | 伊勢 | Trackback | Comments(0)
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