イザイホーとは、 「火のバプテスマ」であり「火継ぎの祭り」。 神が定めた守護霊を継ぐために、 神女たちはクバで葺いた仮屋に三晩にわたって籠り、 神女として、島々国々を守るオナリ神として再生した。 籠り明けの朝、 神女たちは久高島北端のこのカベール岬に 白馬に乗った神が現われるのを幻視したものだという。 ![]() イザイホーの古儀は 日嗣の御子(皇太子、東宮)の践祚祭と同じ。 天津日嗣(あまつひつぎ、皇統)の万世一系は、 古来よりの「日嗣ぎ」によって存続した。 ではなぜ、久高島のイザイホーは、 36年前という現代までも続いたのか。 琉球王朝が終焉を迎えても、戦争で途絶えても、 基本的に12年ごとの秘祭は間断なく続けられた。 琉球の王統は万世一系ではないにもかかわらず…。 その矛盾を埋め合わせるのに、古代における 久高島と天津日嗣との関わりを思わずにいられない。 不思議なことに、久高島の南にあるフシマ(火島) と向かい合わせの位置にあるのが、スベーラの御嶽。 島の神人は「スメラミコトの御嶽」とも呼ぶ。 その横に「「ミナーラ(身になる)川」が流れる。 スベーラの御嶽はまた、島の最高神女であった 久高と外間、両ノロの所属する御嶽でもある。 両ノロの拝礼する向きに、 古来より「竜宮」とも呼ばれるフシマがあるのだ。 写真右側が久高島の南端(再掲)。 丘の上に白く映るのが灯台、その下がスベーラの御嶽。 その岩下にイラブー海蛇が採れるイラブーガマがある。 ![]() フシマ。久高側の岩下にもイラブーガマがある。 こちらは、外間神人だけに採取権がある。 ![]() 「フシマって、いったいどんな御嶽ですか?」 語り部に聞くと、意外な答えが返ってきた。 「不死鳥の島ということですよ。イザイホーのとき、 神女たちの大扇(ンチャティオージ)に描かれている」 「でも、あれは太陽に鳳凰の絵柄では?」 「鳳凰ではなく、本来は火の鳥、フェニックス。 鳳凰をビンヌトゥイと言いますが、 ビンとは“紅”。だから、火の鳥なんです」 「火の鳥。フシマは龍宮じゃないんですか?」 「永遠に甦る龍蛇神の火(霊)の島という意味でしょうね」 グキマーイ(樽廻り)の円舞。 神女たちは大扇の「火の鳥」が描かれた面を胸に掲げる。 ![]() 龍宮と火の鳥…。ああ、それで…。 イザイホーの3日目、神女の誕生を祝いノロが歌う 「朱リィキィ遊び」の神歌が、ようやく理解できる。 後半に、こんな歌詞がある。 〜ニルヤを拝み/ハナヤを拝み/ 天を拝み/お寺を拝み/神女たちよ/ 真南を拝み/スビヤラキ(スベーラの御嶽)を拝み/ 奉ります/明日はなおいっそう奉ります〜 これまで「真南」と「スベヤラキ」の重複に なんとなく違和感があったが、 「真南」を「フシマ」と解すれば合点がいく。 「龍蛇神よ、永遠なれ」 の言霊を、イザイホーの祭りは秘めていた。
by utoutou
| 2015-01-10 19:54
| イザイホー
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Comments(5)
![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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興味深いコメントをありがとうこざいます。
神々の捉え方について、なるほど〜というお話ばかりでした。 そして久高島から変わると。 私も年々そういう気がしています。 アヌンナキとアグル御嶽…、確かにそうですね。 私は最近、ユーラテス川とユーフラヌ浜が気になります。 久高島は、まだまだ隠された部分も多く謎の島ですが、 玉城知念が大和の天孫族にとっての高天原だと、 判明する日はいずれくるのではと、思っています。 今後ともよろしくお願いいたします。
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興味深くいくつか記事を読ませて頂きました。丹塗りの矢の話ですが下鴨神社で詳しく聞きました。二葉の姫が矢を拾った後懐妊したと。その子が上賀茂神社に祀られてるとのことでした。だから、社紋が二葉紋なのだそうです。下鴨神社の横に二葉の姫稲荷があるのですが、とてもてが行き届いてるとは言えなくて地元の心霊スポットになっているようです。昨年夏に行ってから疑問に思っています。二葉の姫稲荷の方が御神体が古く、水や水神が関わっているようです。なぜ下鴨神社が管轄していないのでしょうか?ご存知でしたら教えていただけないでしょうか?見当はずれの質問かもしれないですね。すみません、よろしくお願いします。
はじめまして。返信がすっかり遅れて申し訳ありません。
二葉の姫稲荷…地元の産土神なのでしょうか。あるいは明治時代あたりに下鴨神社から切り離されたのでしょうか。興味が湧きますね。 質問へのお応えにならずにすみません。参ったことがないので、次回京都へ行く機会があればお寄りしたいなと思いました。また何か分かりましたら、お教えくださいね。
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![]() by utoutou
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