日本神話に登場する、 まつろわぬ民の英雄・天津甕星(あまつみかぼし)。 日本書紀にも、異伝中に2ヶ所の記述がある。 武神・経津主神と武甕槌神にも倒せなかった 「香香背男」「悪しき神」「打倒すべき神」。 「天津甕星という悪神をを誅してから平定に赴きたい」 と、武神らが言ったと。 天がどこを指すのかは分からない。 さて、国際通りに居酒屋・百甕(ももがーみ)がある。 ホテルJALシティー那覇の近くで、看板が目立つ。 沖縄出身のお笑い・スリムクラブの真栄田賢さんの 父上が店長ということでテレビに登場、一躍有名店に。 甕(かーみ)とは、酒甕のこと。 経営する酒造の古酒甕がズラッと並んでいるとか。 居酒屋・百甕。写真は「ぐるなび」の店サイトから拝借。 ![]() いっぽう、久高島の神屋にも百甕が。島の方言で「むむはめー」。 ↓ このシラタル宮(久高殿)と外間殿と大里家の神屋、 三宮に設置されている。甕とは神のことだと古語辞典に。 ![]() 久高島の百甕は、いわば賽銭箱。 賽銭は祭りに役立てられる。 秋祭り・ハンジャナシーに、 イラブー採取権を持つ久高ノロと、 燻製を専ら担う村頭(はっしゃ)が、 国神(男女神人)にイラブーを振る舞う儀式がある。 それにしてもなぜ、イラブー(海蛇)の 燻製所(ばいかんやー)が久高殿に? 謎を解くヒントを、 伊勢神宮で忌火屋殿を見たときに得た。 忌火屋殿は、神に供える神饌の調理場。 忌火(いみび)とは「清浄な火」。 神の使い・イラブーを燻した火も、忌火である。 王府時代、薫製イラブーは王への献上品だったが、 元来は、神饌に用いられたと思う。 '78年までシラタルの香炉は、ばいかんやー内にあった。 ↓イザイホーの主祭場・御前庭(うどぅんみゃー)。 10月末の撮影。右がシラタル宮。 シラタルは島立ての祖神で、イザイホーを 再興したファガナシーの夫(従兄弟でもある)。 左がイラブー(海蛇)の燻製所(ばいかんやー)。 築後100年だというが、まだ現役。 ![]() シラタルの正式名は、シラタル・ハンジャナシー。 漢字で書くと、白樽・神・加那志。 樽はタルガナー(神女)のタル、 つまり神のことで、白に続く3文字が「神」。 シラタル・ハンジャナシーとは、至高の神名である。 さらに、白い王で、皇(すめらぎ)。 アマミキヨの一対神・シロミキヨも「白い神」。 白には、皇統の意味もあるらしい。 では、百は? 語り部はこうも言っていたものだ。 「百とは、天(一)から天降りした神」 すると、百甕とは? 「天津甕星と呼ばれた神のことです」と。 何年か越しに、私にもしっかりと飲み込めてきた。 まつろわぬ龍神、そして消された星神、 天津甕星は久高島にいた。 シラタルはその末裔だった。
by utoutou
| 2015-08-23 09:13
| 石垣島
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Comments(2)
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> lapislazuli7さん
そうなんです。だから白は尊い言葉だと語り部さんが言っていました。 同時に、九十九というと九頭龍(くずりゅう)とか国栖(くず)など先住民の意味で、時代によっては逆に蔑称に繋がる場合もあったと。葛湯(くずゆ)は美味しいですね。
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![]() by utoutou
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