石垣市立八重山博物館で「星図」を見た。 農耕の時期を定めるのに使ったという手書きの図。 琉球王朝時代にも、ここが「星の島」 であることに変わりはなかった(当たり前か…)。 解説文には「24あった」という星座名も載る。 現代と同じ名もあり、違う名もあり。 子ノハ星=北極星(以下すべて、右が現代名) 七ツ星=北斗七星、小ヨチヤ星=いるか座 大ヨチヤ星=ペガサス、カボシ星=おひつじ座 六ツ星=すばる(プレアデス)、弐ツ星=双子座 大ウラ座=シリウス そして……えっ? 立明星=オリオンの座の中央の三つの星を 中心に形成される星座 と、そう書いてある。 オリオン座(画像はasahi.com から拝借) の三つ星を沖縄では「黄金三つ星(くがにみちぶし)」 と呼ぶと語り部に聞いたことがあったが、 それを八重山では「(立)明星」と呼んでいたとは。 ![]() 琉球王朝時代、明星(宵の明星、明けの明星) とは「君真物(キンマモン)」のことだった。 聞得大君に憑依してマツリゴトを司る守護神。 もし大君にキンマモンが降りなければ、 ときの王は、神徳がないと見なされた。 『琉球神道記』(1608年、袋中著) のキンマモンの項には、 「琉球の国土と人民を守護するために出現した神」 とあり、また『中山世鑑』(1650年)には、 「海底の宮を住家とする」とも記される。 キンマモンは海神、龍神でもあったわけだ。 もろもろを整理すると… 明星=キンマモン=オリオン座の三つ星=黄金三星=海神 このことを踏まえ、改めて 『おもろさうし』「三日月が節」を独流で読んでみる。 「あれ、上がる三日月(オリオンの三つ星)は神の弓のよう 赤星(オリオンの三つ星)は神の使う矢じりのよう 群れ星(オリオン座)は、神の差す櫛のよう たなびいている虹雲(龍運)は、神の帯のようだ」 なるほど、今度は語り部の言う 「天津甕星の歌」だと感じられた。 ↓ オリオン座の三つ星を中心に 左上の赤いベテルギウス、 右下の青いリゲルなど、四方に輝く星々を 繋げると、神女が飾る「櫛」にも見える。 ![]() もしや… 三日月とは甕月、または甕星のことではないか。 『おもろさうし』(写本)の該当ページを見る。 ↓県立図書館に所蔵されている写本(尚家本)。 『おもろさうし』は基本的に平仮名表記だが、 「三日月」は、どの写本でもこのように漢字になっている。 原本は、首里城の火災(1709年)で焼失したという。 なぜ三日月が漢字なのか。謎めいている。 ![]() 薩摩による琉球侵攻は1609年、 八重山の星図が描かれたのは1756年。 長い時を経てもなお、 天津甕星は龍脈のごとく生き続けていたのか。 古代、後着の渡来民あるいは侵略者に対して、 屈することがなかった先住の神・天津甕星。 大和神話の悪神は、 琉球においては王家を守る最高神であり、 聞得大君の守護神だったと思う。
by utoutou
| 2015-08-23 09:14
| 石垣島
|
Trackback
|
Comments(2)
![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
> 朱璃さん
コメントありがとうございます。イメージを言語化する若い人たちが増えているのではないかと、感じています。かつて語り部さんのところに、能力があって敏感なお子さんを連れてこられた親御さんがいて、面談しているのを見たことがありますが、イメージを言語化して整理することで冷静に自分と向き合えるというようなアドバイスをしていたように記憶しています。
0
|
![]() by utoutou
カテゴリ
全体 ミントングスク 久高島 イザイホー 玉城 語り部 城(ぐすく) 天孫氏 御嶽 スサノオ 出雲 神社 琉球の神々 伊勢 洞穴(ガマ) 龍蛇神 ヤマトタケル お知らせ 天女伝説 斎場御嶽 ナーワンダーグスク 石垣島 九頭龍 瀬織津姫 琉球の玉 舜天 琉球王 グスク・御嶽 最終章 未分類 最新の記事
以前の記事
2025年 07月 2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 more... 画像一覧
最新のコメント
最新のトラックバック
検索
記事ランキング
ブログパーツ
フォロー中のブログ
ブログジャンル
外部リンク
ファン
|
ファン申請 |
||