「魚根家(イン二ヤー)の“魚”とは、鰐鮫ですよ」 と、聞いたときのことは書いておかねばならない。 昨年末、語り部が霊視した。 「やはり和邇氏ですか?」 と聞くと「和邇氏です」と言う。 古代大和豪族・和邇氏のトーテムは鰐鮫で、 龍蛇神を崇めた。 そして猿田彦は和邇氏の祖神。ならば「下駄」 が示すのは和邇氏なのだろう…とは思っていたが。 大和朝廷の成立には欠かせない氏族と言われるいっぽう、 その名を記紀で見ることはほとんどなく、研究も少ない。 ただし、上古、玉城の和名に和邇氏の村があった という口伝は、ミントングスクで秘かに語られてきた。 魚根家(イン二ヤー)の拝所は、魔除けの「石敢當」と アジケー(シャコ貝)が並ぶ、のどかな集落内にある。 ![]() それでも、話をすぐには飲み込めなかった。 イン二ヤーの拝所があるのは久高島である。 神の島とはいえ、祀られる必然はどこに。 「下駄だけで和邇氏と判断してよいですか?」 「拝所の場所からしても、そうだと思います」 「拝所の場所…?」 一帯は、久高島で「くんぶち山」と呼ばれる。 その歴史がどれほど深いかは、確かに地名に表れている。 「くんぶち山」は漢字で「国淵山」。国の淵の山。 「淵」を辞書で調べると「物事の出てくる根源」とある。 つまり「くんぶち山」とは、国ができた根源の山。 ここが、日本という国の原郷と解釈できる。 いっぽう、イン二ヤーは「(魚)根家」。 根家とは「もっとも古い家」という意味だが、すると、 くんぶち山の魚根家は「国の根源にある元家」となる。 かつて「くんぶち山」の由来を島人に尋ねると、 少し困った顔で、目を中空に泳がせていたものだ。 ここはただならぬ歴史を秘めた場所なのだと思った。 ↓久高島にある「くんぶち山」の御嶽付近。 威部(イビ)に石臼も祀られる。古代、石臼は御神体だった。 ![]() 「くんぶち山で、何があったのですか?」 私は聞いた。 「王権の委譲が行われたのだと思います」 「王権の…」 「国津神から天津神に、そして神武に」 「何を譲ったのですか?」 「神代の剣です」 剣とは記紀に登場する「神代三剣」のことで、現在 そのひとつは石上神宮(奈良県)に祀られているという。 「誰が譲ったのですか?」 「猿田彦ですよ、ミントングスクのソネ彦」 ソネ彦!! ミントン古伝の『如件のごとし』に、 「アマミキヨの夫」として、その名が見える。 「猿田彦がソネ彦だったとは。で、ソネの意味は?」 「私は、蘇・根彦なのだと思っています。 または、祖・根彦。彦は日子、日の御子です」 「根」という字は、沖縄の歴史に頻繁に登場する。 根家には、祭祀を司る根神(女)と根人(男)がいる。 百名玉城は「根の国」と呼ばれ、根所という旧跡がある。 話は飛んで、和邇氏関連の天皇の諡号にも「根子」がつく。 猿田彦と呼ばれた「蘇・根彦」が「アマミキヨの夫」 で、記紀によって名前を変更された神なら、 後世、末裔が願いを込めて「蘇る根の日子 =蘇根彦=ソネ彦」と語り継いでも不思議はない。 「蘇民将来の蘇でもありますね」と、語り部。 和邇氏、ソネ彦とは素戔男尊に繫がる系譜なのか。 何やら「根の国」の真意が解けてくる気配…。 和邇氏の和邇は、和珥、和爾、丸子とも表記される。 ↓斎場御嶽の下、海岸にある御嶽「マルチャ龍宮」。 「マルチャは丸子の意味だろうと思う」と語り部は言う。 ![]()
by utoutou
| 2015-02-18 16:43
| 久高島
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|
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