飛騨一之宮水無神社の祭神は火明命… という説は『飛騨一之宮 水無神社の歴史』 ('98年 水無神社刊)にも記されている。 「飛騨国造の祖・大八椅命は火明命の末裔」とも。 尾張氏の始祖・天火明命が繫ぐ系譜が浮き彫りになる。 火明命は亦の名を饒速日速命(=ニギハヤヒ) といい、物部氏や海部氏の祖神でもある。 主だった海人氏族は同神を祖としたわけだが、 それが火明命ということは、 まさに語り部が言う「火の一族」の証。 「日玉の国」と呼ばれた飛騨もまた…。 太陽を崇め、火継の皇子が治め、製鉄技術を持つ民。 飛騨は古代「斐陀」と表記したそうだ。 火は日、緋、陽、樋、斐…などとも記される。 そして、そこに流れる川には「ひ」がつく。 氷川、日川、斐川…、沖縄では樋川(ひーじゃー)。 元来すべて「火川」だったのではないか? フシマ(火島)のある沖縄久高島も「火」の痕跡を残す。 イザイホーで神女たちが胸に抱いた大扇に描かれた鳥は 鳳凰と言われるが、元々は「紅(ビン)の鳥」 つまり火の鳥だったのではと、語り部は言う。 火の鳥=不死鳥(フェニックス)。 これも「火の一族」の象徴。 ちなみに久高島の火島は「龍宮」とも呼ばれた。 龍神のいる島だと。火の一族は海人族でもあった。 「火の鳥と太陽」が描かれた大扇(久高島・外間殿) ![]() そんなことを書いていると、語り部から電話。 「びしゅう…尾州とは尾張のことですよね? なぜ草薙の剣が尾張に祀られてきたかが分かりました。 尾州の意味は、ヤマタノオロチの“尾を守る国”。 草薙の剣を守るべき理由があったのだと思います」 話を聞いて、ああそれでと、目から鱗がボロボロと。 草薙の剣はヤマトタケル亡き後も なぜ熱田の地に祀られたのか。 尾張からそう遠くない伊勢に 戻してもよさそうなものをと思っていたが、 尾張にこそ、その必然があったのなら納得だ。 また宮簀姫の兄で熱田神宮に祀られる 建稲種命(たけいなだねのみこと)は、なぜ ヤマトタケル東征の副将軍として随行したのかと 不思議だったが、草薙の剣を守る者なら当然だ。 建稲種命は「火明命十一世の孫」。そして、 「亦の名は須佐之男」と『海部氏勘注系図』に見える。 スサノオとは唐突な神名だと思っていたが、 建稲種命はヤマトタケル同様、まさに、 海を統べる神・スサノオの再来だったのだろう。 語り部は言っていたものだ。 「ヤマトタケルこと小碓命は大碓命と双子と言いますが、 私にはどうしても他に片割れがいるとしか思えない」と。 記紀が隠したその片割れとは、建稲種命だったのか…。 熱田にあるヤマトタケル御稜の「白鳥御稜」 白鳥は産鉄場に立つ水蒸気のことだと書いたが、 白鳥とは「火の鳥」の意味もあったかもしれない。 ![]() 左は白鳥稜に隣接する曹洞宗・法持寺(ほうじし)。 南に熱田の海を見下ろす立地から 山号は「白鳥山(はくちょうさん)」と呼ばれた。 ![]() 法持寺。 白鳥稜の宝物を護持したため、昔は「宝持寺」と。 白鳥稜は6世紀初めの古墳。尾張一族の栄華が偲ばれる。 ![]()
by utoutou
| 2015-06-18 19:31
| ヤマトタケル
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Comments(2)
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初めまして。琉球列島の古代史、とても参考になります。
唐突ですが昭和35年に初めて「飛騨の口碑」が上方家(うわかた家)から外に出ました。 門外不出の秘伝として太古より代々伝わっていた日本皇統発祥に関する口碑です。 とても全容は紹介し切れませんが、飛騨が日本人の発祥地であり日本皇統の発祥地でもあります。 天照大神は水無神社辺りにお住まいの実在した御方です。 素戔嗚命とは二人姉弟でした。 故山本健造氏の「明らかにされた神武以前」等の著書を一度ご覧になって下さい。 失礼します。
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> Misaki 7677さん
初めまして。熱田神宮の項から来訪いただいたのでしょうか。私も、熱田に行き、地理的にも飛騨を意識せざるを得ないと感じました。戦争中、飛騨一の宮水無神社に、草薙の剣が避難したことにも、飛騨古代史が関係していると思っています。 山本健造氏の御著書は読んでいます。そこで知ったウワカタ家が「上方家」の表記だと分かりました。ありがとうございます。10年ほど前だった当時は腑に落ちなかったことも、琉球に通い始めると、さほど無理なく分かるようになりました。 また数年前、飛騨に行き、御旅所、一の宮、位山、天岩戸、日抱宮、楯鉾神社などを廻りました。富山→白山→飛騨。いっぽう、南方→熱田→恵那→飛騨。大雑把ですが、飛騨に、古代倭族が南北経由で集結した歴史があったのかなと想像しています。
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