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沖縄の天女伝説 ② 天女神加那志(てんじょしんがなし)

『琉球祖先宝鑑』('33年、琉球史料研究会)
は、歴史研究家・慶留間知徳氏の著。
琉球の歴史上の人物三百数十名を列記して、
その出自・居所・葬所などを克明に記した人名録。
沖縄の神事や門中などを知るひとつの手がかり
として、多くの門中の元家に保管されている。

巻末に載る氏姓集は、首里王府系図座の資料から
編集したもので、系統を尋ねる貴重な書とされる。

戦前まで、各地の門中で「元家はミントン」と
伝えていたという話はよく聞くが、それは
ミントン家の始祖アマミキヨ・シロミキヨの子孫が
各地に発展したのが現在の沖縄だという古伝による。


さて、「天女神加那志、 
玉骨は久手堅村の後方波御嶽の内に埋葬」と
『琉球祖先宝鑑』に記されていることは、
何度か読んだのに気がつかないことだった。
その女神が初代・聞得大君の母神だったとは、
「囲む会」で語り部が偶然、口にするまで…。
(※波御嶽とは、文脈から才波(斎場)御嶽と考えられる)


斎場御嶽の風葬墓とはナーワンダーグスクを指す。
斎場御嶽の奥宮である。昭和以前には
参拝できたといい、さらに遡り、
琉球第二尚氏王朝三代の尚真王の時代までは、
そのナーワンダーが第一の御嶽であったため、その真下に
位置する寄満で王と聞得大君が戦勝祈願したとの記録がある。

語り部が聞いた民間伝承では、当時まで、
聞得大君の即位式はこの寄満で行われたというのだ。
(琉球王朝の記録では、大庫理で行われたとされる)



↓寄満からナーワンダーグスク(右上)を仰ぐ(13時)。
この寄満、そして大庫理、三庫理といった斎場御嶽の
主だった祭場は、ナーワンダーグスクから東へ一直線に
並んでおり、その東方に久高島が浮かぶといった位置関係。
これを見ても、ナーワンダーグスクの重要性が伺われる。
沖縄の天女伝説 ② 天女神加那志(てんじょしんがなし)_a0300530_12403582.jpg



ナーワンダーグスクに折よく登った1年前の
レポートは、こちらのシリーズで。

天女神加那志は、アマミキヨ四世という。
そこになぜいままで気づかなかったかのか。



↓『琉球祖先宝鑑』の1P目に以下のアマミキヨ系図があるが…。
沖縄の天女伝説 ② 天女神加那志(てんじょしんがなし)_a0300530_13221441.jpg


私はこれを『中山世鑑』(1650年編纂)の琉球神話……
「安摩美姑(アマミキヨ)・志仁礼久(シロミキヨ)
の間に、三男二女が生まれた。
長男は国王のはじめとなって天孫と称した。
次男は按司のはじめ、
三男は百姓のはじめ、長女は大君のはじめ、
次女はノロのはじめになった」
と、同じ内容なのだろうと思い込んでいた。  


ところが、語り部の話をきっかけに『琉球祖先宝鑑』を
改めて読んでみると、実は上の図は略図で、
一世の阿摩美姑と天帝子の間の
二代がカットされていたことが分かった。

天帝子は上の図から見える二世ではなく
四世で、その妃が天女神加那志だった。
天帝子・天女神加那志の子である三男二女のうち、
長女が初代の聞得大君になったとされているわけだ。

ちなみに、その系図部分を抜粋すると…。

 一世の志礼仁久と安摩美姑には、
13人の子がいた。
二世の天美人加那と巣出美人加那志には、
10名の子がいた。
三世の天太子大神加那志と竜宮女大神加那志には、
20人の子がいた。

  以上三世は本島開発前の御世也(ママ)

そして、
四世の天帝子加那志と天女神加那志には、
5人の子がいた。
一万七千八百二年(ママ)
         
  いまでは語る人のないアマミキヨ系図伝承。
そして、天孫氏王朝のはじまり。 
  語り部によれば、天女神加那志は、
   琉球の天女伝説の原型になっているという。



     8月18日(火)の朝日。玉城垣の花より久高島を望む。    
沖縄の天女伝説 ② 天女神加那志(てんじょしんがなし)_a0300530_73365.jpg




by utoutou | 2015-08-24 15:33 | 天女伝説 | Trackback | Comments(2)
Commented at 2015-08-25 17:21 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by utoutou at 2015-08-26 08:16
> 徹平さん
こんにちは。
はい、空き地というか小高い丘にあります。
まず百名公民館の敷地内に「ちんたかーの御嶽」があります。
公民館を出て鳥居のある「大前の殿」の前を通ると、突き当たりの
T字路が「百名」の信号で、これを左へ(登り坂です)。

左手歩道の先に「百名美容室」の看板が見えますが、
そこまで行かず、
すぐ左手にある小高い森の中に「ちんさーの御嶽」があります😄
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