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六甲山と瀬織津姫 248 龍王山の不動明王

和爾坐赤坂比古神社(天理市和爾町)の祭神
は、吾田賀田須命と市杵島比売命。
現在の和爾町から山の辺の道に沿って、おそらく
三輪山の周辺まで、龍王山を中心とした一帯を
本拠地とした古代豪族・和邇氏の一族の祖神という。

吾田賀田須命は、和邇氏の本来の祖神なのか?
しかし、語り部の見立ては、案外と辛辣だった。
「和邇氏の直系とは思えません。何かの経緯があって
和邇氏の系図に入ったか、逆に和邇氏が生き延びる
ために、祖神を吾田賀田須命の裏に隠したのか…」

春日大社の榎本神社の祭神・猿田彦命を思い出す。
本来の地主神が本殿の脇に追いやられていた。

そして、こんな気になる一言を付け加えた。
「でも、和邇氏の本当の祖神は、その近くに祀られて
 いると思います。龍王山という山には登りましたか?」
「もちろん、登りましたよ。長岳寺の奥の院へも」



空海の開基という長岳寺(天理市柳本町)で話を聞き、
久高島の神女(カミンチュ)・A子さんと龍王山
の山中の奥の院へと参ったのは、5月末のことだ。
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登山の装備をしていなかった私たちは、まず車で
龍王山山頂近くまで行き、車を置いて徒歩で下った。
下調べもなく不安だったが、登山道は整備されて
 おり、沖縄の御嶽に比べればそう困難でもなかった。


そうして出会ったのは、素晴らしい不動明王の石仏。
元徳2(1330)年。鎌倉時代末期の作らしい。
火炎後背のある背丈2mもの不動明王。直立する
その表情は、目は凛々しく、口元は深く優しい。
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龍王山は15世紀の龍王山城跡として、あるいは
古代の信仰の場として、重層的な歴史を秘める。
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先に山道を下って、不動明王の石仏を見つけたA子
が、今度は足元を流れる小川にしばしうずくまって
いたかと思うと、小石を指して大きな声を上げた。
「あっ、これはすごい、光ってる、金ですよね」
木漏れ日を受けて、金を埋めた石が輝いていた。
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不動明王の導きかどうか、私には分からない。
金の川から小石をふたつ掴み、A子さんは言った。
「失礼いたします。しばらく久高島にお借りします」
久高島へ持ち帰り、御嶽で鎮めの祈りをするという。


その後、私たちは龍王山の山頂へ足を伸ばし休憩。
大和盆地を眺め、そこがまだ海だった頃を思った。
もしここに琉球から和邇氏が渡来していたならば、
彼女が連れ帰る石にとっては、祖神のいた島への旅?
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奈良・龍王山の山頂の三角点にその石を置く。
四角とハート型の石は、久高島で何を語る?
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語り部は、言う。
「その石は、和邇氏の祖神と、琉球の球について、 
 何か大きなヒントを与えてくれると思います」

久高島のカミンチュが持ち帰った龍王山の石は、
いま島内のどこの御嶽に祀られているのだろうか?





by utoutou | 2019-07-23 17:35 | 瀬織津姫 | Trackback | Comments(2)
Commented by グゥ at 2019-07-25 10:22
空海さんは水の女神を封印するために反対の火と男の不動明王を建てたと聞いたことがあります。でも最近は時節が来るまで隠し守ってたのではないのか、という気がしています。

いつも面白い記事をありがとうございます。これからも楽しみにしています!
Commented by utoutou at 2019-07-27 09:52
> グゥさん
空海さんが不動明王の彫像にどのような創作意志を込めたか…については諸説あるかと思います。グゥさんのおっしゃる女神封印説、あるいは不動明王=女神説など。私はこれまで前者に近い印象を持っていたのですが、龍王山の優しい表情の不動明王に対面したとき、こちらの不動明王の作者は、その両方を意識して彫像しただろうと感じました。表情のそここここに女性性が浮き彫りにされていたので。もっと各地の不動明王も拝観していきたいですね。もちろん、空海は隠し持ち守護していたというご意見にも引かれます。
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