後に「土蜘蛛」と呼ばれることになる山の民は、 神世の時代から葛城で金鉱を採掘していたらしい。 また、葦原に生成するスズ鉄を採り、地炉(じろ、 沖縄では、じーろ)に火を点け、鉄具も作っていた。 天孫降臨の舞台・高天彦神社にも蜘蛛塚はある。 縄文時代の末期、大陸から鴨族が渡来してくると、 彼らに、蹈鞴(たたら)を使った製鉄を教えた。 高鴨神社に祀られている鴨族の祖神・味耜高彦根神 は耜(すき、鋤)の字を含んでいる。農業の神だった。 鴨族は、葛城川の下流に移動して水稲耕作を始めた。 やがて、神武を初代とする葛城族が渡来して、 先住族(土蜘蛛)を統率する鴨族と姻戚関係を結ぶ。 神武の皇后になったのは、媛蹈鞴五十鈴媛命。 亦の名は、登冨多々良伊須須岐比売(古事記)。 ホト(火床)とタタラ(蹈鞴)を守護する女神だ。 媛蹈鞴五十鈴姫は、事代主神が八尋鰐となって 三嶋溝杭の娘の元に通って生まれたという。 事代主神と三島溝杭とは、いずれも賀茂建角身命 の別名と言われる。あるいは、八咫烏の別名とも。 古代海人族の習俗を考えれば、鴨族は母系制だった はずで、つまり媛蹈鞴五十鈴姫は鴨王家の王女だった。 一説に、神武はその母系王家の入り婿となった。 五十鈴姫の祖先神にあたるのが、あの 味耜高彦根神(迦毛之大神)と下照姫という兄妹神だ。 鴨(賀茂、加茂)神社の元宮・高鴨神社の祭神である。 いっぽう、下照姫は、葛城山の麓に鎮座する 葛城御歳神社(御所市東持田)でも、御歳神の 相殿に高照姫として祀られる。(写真はHPより拝借) 鴨都波神社(葛城市宮町)では、鴨都波事代主神 とともに、下照姫は主祭神として祀られている。 下照姫とは、天から下を照らす太陽神の巫女か。 鴨都波神社の祭神・八重事代主神は「田の神」で、 下照姫は、田を潤す「水の神」としても崇められた。 鴨都波神社は、葛城川と柳田川の合流地点にある。 下照姫は、「川の神」でもあったのだろう。 さて、この神社を訪れて以来、謎だったことがある。 鴨都波神社の「都波(つば、つは)」とは何か…? その意味に、ようやく気がついた。 都波(つは)は、水の神・ミズハノメの「づは」。 弥都波能売神(日本書紀)、罔象女神(古事記)。 どちらも、水の神・ミズハノメノカミのことだ。 調べてみると、鴨都波神社の古名は、 鴨弥都波神社(かも・みづは神社)だったという 伝承があるそうだ。「みづは」は「水端」の意味だと。 「鴨のみづはの神」、下照姫はミズハノメノカミだ。 葛城には縄文の女神・瀬織津姫が隠されている…。
by utoutou
| 2021-08-15 23:02
| 天孫氏
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