日向国二ノ宮都萬神社(西都市妻)には、代々の社家 だった日下部氏にまつわる「土中出生伝承」がある。 日下部氏の始祖神は、都萬大明神によって土中から 掘り出された一人ずつの男女だったという縁起だ。 都萬神社の祭神は、木花咲耶姫。それで分かるように、 日向は、天孫降臨の舞台である。でありながら、社家 ・日下部氏の神観念は、天から降りる神を崇めるのでなく 「水平的」。「地の底・海の底」の神への信仰を思わせる。 「都萬神社のある妻に、井戸を掘らないという伝統 があるのは、地中が神の本源地とみなされていたから だろう」と、西都原古墳研究の第一人者・日高正晴氏は、 その著書『西都原古代文化を探る』で述べている。 ところで、 その「土中からの始祖」神話は、東南アジアや、 ニューギニアなどのオセアニア、台湾、琉球南部の 島々に見られるという。韓国では済州島だけに伝わる。 日向の海人族・日下部氏ならではの海洋性を感じる。 民俗学では、沖縄の本島周辺に土中始祖伝承はない と、されているらしい。先島諸島以外の琉球諸島は オセアニア〜韓国・済州島に分布する伝承の「空白 地帯」というわけだが、実は「アマミキヨの居住地」 という本島南部のミントングスクにも洞穴伝承はある。 「御先の時代、↓ミントングスクの奥にガマがあった」 と、かつて語り部からは何度か聞いたことがある。 前回書いた「生きていても家、死んでからも家」という ガマに対する表現は、ミントングスクにも当てはまる。 すると、「アマミキヨは、あっちから来た人」という 伝えには、本来いた始祖の土中出生伝承が隠されている? いっぽう、 久高島の始祖と伝わるアナゴノシー・アナゴノファー については ★ などに書いていた。文字通り、穴に住む 男女一対神で、ヤマト神話では天穂日命とされたらしい。 琉球で、古来、女性を火(ほー)、男性を火(ひー) と呼んだのが語源となったのだろうと、語り部は言う。 その久高島の始祖、アナゴノシー・アナゴノファーと いう神名の「穴」とは、「てぃだが穴」だと考えている。 地底にあると信じられた太陽の通り道を、そして朝には 東の空の若てぃだ(ソントン)となる太陽神を、守護した。 久高島と日下部氏の始祖は、まさに「地底」で通じている。 そして、さらには韓国・済州島とも通じているようだ…。 アナゴノシー・アナゴノファーのガマがあるアグルラキ。 島の南部まで通じていたという穴(龍宮)の入口がある
by utoutou
| 2022-09-04 18:01
| 琉球王
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