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南島の瀬織津姫〈18〉菊理姫

明治時代まで白山比咩神社(白山市三宮町)
の社地に坐した河濯尊大権現(カワスソンサマ)、
また泰澄寺(福井市三十八社町)の本尊である
血染めの十一面観音については過去ログに書いた。

その上で、未だに分からないことがある。
白山の開祖であった泰澄が自ら彫像したという
河濯尊大権現(瀬織津姫命)は、なぜ、
白山比咩神社の主祭神になり得なかったのだろう?
また、十一面観音像はなぜ血に染まったのだろう?
穏やかでない経緯、いや高僧の苦悩が感じられる。

「越の大徳」と呼ばれたという泰澄の歩みを見ると、
36歳(716年)で白山に登頂。十一面観音の夢告で
 白山比咩を感得。渡来の菊理姫尊と習合したようだ。

それより以前の702年、呪験力が認められ21歳に
して鎮護国家法師に任ぜられているが、その名声
 はつとに高まり、41歳(722年)で元正天皇の病
 の治癒にあたり、護持僧として禅師の位を授かり、
また流行した疱瘡を呪法により終息させた功績に
 よって聖武天皇より、大和尚位を賜ったと伝わる。


泰澄大師生誕の地・泰澄寺に立つ泰澄像
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鎮護国家法師としての業績を重ねる一方、泰澄
はその立場と相反したと思われる地母神の祭祀
  を、一体、どのように司っていたのだろうか?   

鎮護国家法師の立場上、泰澄は秘さねばならぬ神
を白山三尊の背後に封じていた…と、菊池展明氏は
 著書『円空と瀬織津姫』で、私論を展開している。

〜 泰澄が加賀の白山本宮で、この神(瀬織津姫)
を「河濯尊大権現」として彫像したという伝承
が語ることはなにかと言えば、それは、
「河濯尊大権現」に秘された神を「鎮護国家」
 の建前のために白山の主祭祀からは消去するも、
その存在までは完全に消すことをしない
(できない)という泰澄の複雑な思いである 〜

泰澄大師の立場を思うと、高僧とはいえ、何やら
いつの世にもある個と公のせめぎ合う様が窺える。


古来、白山比咩神社の社地にあったと
される河濯尊大権現堂の河濯尊様(瀬織津姫)
※「金沢・能登お進め観光スポット」より拝借
南島の瀬織津姫〈18〉菊理姫_a0300530_10303725.png








話は一転、実は私が那覇にいた先日、語り部が
「南島の瀬織津姫」について興味深い話をした。

私はこんな質問をした。
「泰澄が崇めた瀬織津姫(河濯尊大権現)と、
白山比咩神社の菊理姫は同神だと思いますか?」

「菊理姫を沖縄で視たことが2度ありますが、
1度は、アマミキヨが渡来したヤハラヅカサでです。
菊理姫が海から上がって浜川御嶽に向かったとき、
歓迎するように河原に瀬織津姫が立ったのです」

「渡来の女神を迎える、地母神である水神の図…。
つまり、菊理姫と瀬織津姫は同神ではないと?」
「そうですね、お顔が違うその姿も視ましたから」

菊理姫を崇める人々は琉球に繰り返し渡り来た。
思えば、語り部はこれまで何度もそう言った。
琉球王朝の最高神官である聞得大君は、菊理姫
の神徳を受け継いだとも。つまりどういうこと?


'25年8月7日のヤハラヅカサ(南城市玉城百名)
南島の瀬織津姫〈18〉菊理姫_a0300530_10370236.jpg



by utoutou | 2025-08-16 20:56 | 最終章 | Trackback | Comments(4)
Commented at 2025-09-27 14:00
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by utoutou at 2025-09-28 17:29
> 匿名さん
こんにちは。豪族の柴山氏に所縁がおありなのでしょうか。しかも近くには白山比咩神社。気になりますね! 富山県の昆布消費量が大きいのは北前船の影響だそうですが、北海道に瀬織津姫を祀る神社があるのも同じ理由ですね。白山・新羅と沖繩も海流が繋ぐご縁だと思っています。
Commented at 2025-09-29 12:32
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by utoutou at 2025-10-28 16:41
> 匿名さん
すっかり返信が遅れまして、すみません。瀬織津姫と昆布の関係ですが、瀬織津姫を崇める海の民は、時代は下っても北前船で日本海を往還していたわけですが、それにつれて食文化や信仰も継承されたという意味で、海流で繋がっていると書きました。
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