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天孫氏は火の一族〈6〉隼人と瀬織津姫

瓊瓊杵命と木花咲耶姫の結婚神話とは、
「北の鉄」と「南の鉄」の融合を指している。

大陸の北から伝わった製鉄技術は、主に火山系
の磁鉄鉱・赤鉄鉱を使う「高温銑鉄製鉄」。
神話に例えれば、邇邇芸命の製鉄技術がこれだ。

大陸の南・江南から伝わった製鉄技術は、
水成岩系の水辺の鉄、つまり褐鉄鉱を還元する、
 いわゆる野だたらによる「低温鍛造製鉄」だった。
 神話に例えれば、饒速日命や宇摩志麻遅命の製鉄だ。
(※浅井壮一郎・著『古代製鉄物語』を参照)


瓊瓊杵命の四世孫・神武が、列島最大の産鉄地
だった大和盆地(湿原)へと東遷するには、
 饒速日命と同じ、「南の鉄」の技術が不可欠だった。
ゆえに、邇邇芸命と木花咲耶姫は結ばれた。

ところで、
北系にしろ南系にしろ、採掘する産鉄族は移動する。
江南から薩摩半島に来た隼人族は、どこへ移ったか?

浅井氏は、その足跡と広がりを次のように記した。

薩摩半島→球磨川河口の八代(熊本)→菊池川
下流の平野(〃)→筑後川(熊本・大分・佐賀・福岡)
→嘉瀬川下流の筑紫平野(佐賀)。

しかし、はたして有明海周辺までの範囲だろうか?
と、考えたところで、思い出したのことがあった。
関門海峡へも行っていたはずだと。


3年前の今頃、北九州市門司区の和布刈神社で
和布刈神事を見た。旧正月元旦、引き潮の海中に
 神職が入り、松明を掲げて若布(わかめ)を採る。
(今年20年の和布刈神事は、25日に行われたそうだ)
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この若布は、「壇ノ浦わかめ」とも呼ばれる。

いっぽう、和布刈神社にも別名がいくつかあり、
仲哀天皇9年の創祀から明治期まで、「速戸社」
「早鞆社」「速戸大明神」「早鞆大明神」と呼ばれた。
なぜなら、海峡の古名とは、「早鞆の瀬戸」だった。
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 さらに最古の社名は、「隼人社」「隼人大明神」。
隼人族の足跡が、「早靭」の地名に残っていた。
それでは、この地に祀られた「隼人大明神」とは…?

あの旅にちょうど持って出た本…菊池展明・著
『八幡比咩神とは何か〜隼人の蜂起と瀬織津姫』
の次のくだりには、目から鱗がボロボロと落ちた。

〜隼人大明神と呼ばれていた天照大神荒御魂は、
神功皇后の征討譚と神社由緒が結びつけられ…
(中略)「西門鎮護の神」と、その神徳が語られて
きました。この神の鎮座地は「速吸の穴門の瀬戸」
(早靭ノ瀬戸=速戸)に接するところにあり、
その神徳の原像を言えば、海の神霊から海峡の神霊
へと転じたといえましょう。〜

天照大神荒御魂=瀬織津姫=弁財天=媽祖=天妃。
その原像は、隼人(海人族)が崇めた航海の守護神。
隼人(熊襲)の国・閩越(越、古名・委)の女神。

蝦夷(えみし)の国の女神・瀬織津姫は、
大陸の「夷(えみし)の国の女神」でもあったのだ。

古代中国では、非漢民族を「夷」と蔑称で呼んだ。
古代日本では、まつろわぬ民を「蝦夷」と呼んだ。



隼人大明神(瀬織津姫)が降臨したと伝わる「神居岩」。

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# by utoutou | 2020-01-29 21:09 | 天孫氏 | Trackback | Comments(6)